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おしゃぶり


 日本には子供の情操を考え、赤ちゃんにお母さんのお乳をできるだけ長く与えるという慣習があります。なかには3年近くにわたって与え続けるお母さんもいます。これはこれで子供の心の発達にいい影響を与えると考えられます。一方、ことアレルギーに関してはこれが子供に悪影響を及ぼします。今、子どもの3人に2人がアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、喘息等何らかのアレルギーを持っています。ところで、イスラエルのお母さんは、お乳を与えるのは生まれて1〜3か月で、その後は口に入るものは何でも食べさせます。もともと離乳食という考え方がありません。このイスラエルの子供たちに食物アレルギーがほとんどありません。アレルギー性鼻炎も、食物アレルギーも、喘息も、アレルギーはすべて皮膚・粘膜の感作から始まります。初めてピーナッツを食べた子供がピーナッツアレルギーになるわけではありません。もともと感作を受けていなければピーナッツアレルギーは発症しません。喘息はハウスダスト(HD)・ダニが原因ですが、これも皮膚・粘膜感作を受けて初めて発症します。4歳離れた2人の兄弟がいるとします。お母さんが下の子にお乳を与えている時に、上の子はソファーや絨毯のうえで、お菓子を食べ、その食べかすが、あちこちに落ちています。絨毯はHD、ダニの巣窟です。下の子がハイハイするようになると、その成分、小麦、卵、乳製品、エビ、カニ、HD、ダニの成分(抗原)が皮膚・粘膜を介して体に入ってきます。これを繰り返しているうちに感作が成立します。これらの食物に感作を受けた子供が、幼稚園、小学校に入った時、その成分を食べて、突然アナフィラキシーを起こすことがあります。これがアレルギーの正体です。2016〜2017年にかけて、和歌山県立医大のグループを中心に、乳児期の食器の共有や、親の唾液によるおしゃぶりの洗浄を介した唾液接触と、小学生のアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息の発症リスクとの関連の研究が、石川県加賀市と栃木県栃木市で行われました。小中学生の保護者にアンケートをとり、回答した3380人のうち、乳児期に唾液洗浄したおしゃぶりを与えたのは76人で、スプーンや食器を共有したのは336人でした。分析の結果、唾液洗浄のおしゃぶりを与えられていた子供の場合、それをされなかった子供に比べ、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが65%、アレルギー性鼻炎が67%低下していました。食器共有の場合は48%抑えられていました。もちろん、口腔衛生的な観点から虫歯につながるリスクは残されていますが、おしゃぶりは生後6か月までで、虫歯菌の感染時期は生後19〜31か月で問題ありません。ヒトの体の表面や管腔(口腔〜消化管)には、1000兆個を超える微生物が集団で生息しています。この中で一番多いのが口腔フローラ(細菌叢)で500〜700種類あります。唾液や食器を介してこれらの細菌叢に早くから接触すればするほど、免疫の暴走を食い止める制御性T細胞が増えることがわかりました。お母さんの唾液の中は細菌だけではありません。アレルギー表示食品の殆どが含まれています。これらを、赤ちゃんの頃から体内に取り込むことによって、自然にアレルギーに対する免疫寛容状態を作ります。アレルギーは、もともと感作を受けた成分のIgE抗体が抗原とくっついて、抗原抗体反応を起こすことにより発症します。赤ちゃんの頃から免疫寛容状態にある子供にアレルギー食品を食べさせても、遮断抗体(IgG4抗体)が邪魔をします。この状態は一生つづき、大人になってもアレルギーを発症することはまずありません。


2023.7.4. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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