特異的減感作療法
今日は花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の唯一の治療法である特異的減感作療法についてお話したいと思います。
何らかのアレルギーに罹患している人はついに国民の30%を超え、今後ますます増えていく傾向にあります。花粉症の原因については戦後の国の植林事業や大気汚染,食事の西欧化などが関与していると考えられますが、いまだはっきりとした結論は出ていません。気管支喘息は15年ほど前からはじまった吸入ステロイドによる治療で喘息死こそ減ってきましたが患者は高年齢化、低年齢化し増加しています。アトピー性皮膚炎も最近ではIgEが通常だと生後半年程から産生されてくるはずのものが、2,3ヶ月でIgEが高くなり発症する患者さんもいます。
アレルギー疾患がいわゆる肺炎、急性腎盂腎炎、急性心筋梗塞などといった急性炎症と異なり慢性の炎症であると認識されるようになってこの10年ほどの間アレルギーの治療は大きく変わってきました。気管支喘息に代表されるようにできるだけ早期に炎症を押さえる、将来にわたって炎症が持続しないようにする、というのがアレルギー治療の基本です。そのためにはステロイド、ロイコトリエン拮抗薬などの抗炎症薬を早期に十分な量投与することが必要です。しかし、それでもアレルギー性炎症が止まらない、くすぶった炎症が持続する人はどうしたらいいのでしょうか。
特異的減感作療法はT型アレルギー(おもに免疫グロブリンIgEを介するアレルギー)に対する唯一の治療方法として1940年にNoonらによって報告され、臨床上いまだこれ以上有益な方法はありません。これはアレルギー疾患の原因となる抗原を少量から徐々に増量し、抗原に対して過敏性を低下させることを目的とした免疫療法の一種です。治療中に免疫グロブリンIgGのサブタイプであるIgG4抗体が高くなり、これが遮断抗体ではないかといわれています。
それでは当院で行っている特異的減感作療法について具体的にお話しします。まずはじめに皮内反応検査で抗原の濃度を5段階にわけて閾値を求めます。閾値の100倍から1000倍くらいの抗原をその後1週間に1回から2回徐々に濃度を上げながら皮下注射していきます。皮膚反応の直径が5cmほどになったときがその人の抗原の濃度の維持量ですが、人によってはその10倍から100倍で臨床効果が十分なこともあります。治療期間は2ヶ月ほどですが、期間を短くしたり延ばしたりすることはできます。しかし、免疫を維持するために最低2年間は1ヶ月に一度、皮下注射を続ける必要があります。治療効果は疾患によって若干異なりますが、改善率はおおよそ80%程度です。
治療中の副作用については特異的反応と全身反応がありますが、何といっても抗原を注入するわけですから全身のアナフィラキシーショックに気をつけます。そのためには最初にきちんとしたデータを取ることが大切です。紙面がなくなりましたのでまた次の機会にお話します。
2004.2.10. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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