|| HOME || 診療のご案内 || ドクタープロフィール || 人間ドック・脳ドッグ || アレルギー専門外来 || ペインクリニック ||

|| 東京保険医新聞より || ドクターコラム || アレルギーQ&A || 新型コロナウイルス || お知らせ || 地図 || Link ||

新型コロナウイルス その28 熱中症


 新型コロナウイルス禍の中、これから熱中症が増えるシーズンになりました。日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本感染症学会・日本呼吸器学会が医療従事者向けに「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」、熱中症予防・診断・治療に対するクリニカルクエスチョン一覧と解説を作成しました。以下におおまかなあらすじをご紹介します。まず予防(1、マスク)です。Q:熱中症を予防する上でのマスク着用の注意点は何か?A:マスクを着用する際は、長時間(1時間以上)の運動を避けることが望ましい。解説;サージカルマスクもN95マスクも、5.6km/hrでトレッドミルを行うと、心拍数、呼吸数、経皮二酸化炭素分圧が上昇、特にマスク内の顔面温度が1.76℃上昇していた。また、3時間装着後には、マスクを外しても90分は増大した鼻抵抗が回復しなかった。次も予防(2,エアコン)です。Q;COVID‐19の予防で「密閉」空間にしないようにしながら、熱中症を予防するためには、どのようにエアコンを用いるべきか? A;換気により室内温度が高くなるため、エアコンの温度設定を下げるなどの調整を行い、熱中症対策とCOVID-19対策を両立することが望ましい。解説;COVID‐19に対する感染対策(いわゆる3密を防ぐ)において、「密閉」空間にしないようにするために、こまめな換気が必要である。換気方法としては、居室の温度及び相対湿度を、28℃以下および70%以下に維持できる範囲内で、2方向の窓を常時、できるだけ開けて、連続的に室内に空気を通すことが推奨される。次は、診断(1,臨床症状)です。Q;熱中症とCOVID‐19は臨床症状から鑑別できるか?A;嗅覚障害や味覚障害を認める場合COVID‐19を疑う根拠にはなるが、臨床症状のみから熱中症とCOVID‐19を鑑別することは困難である。解説;COVID‐19の主症状は呼吸器症状であるが、重症の熱中症でも頻呼吸を38.4〜40.0%に、呼吸困難を71.4%に、SpO2低下を21.0%に認める。COVID‐19に特徴的な初期症状として臭覚障害が52.7%、味覚障害が43.9%に認める。熱中症の特異的症状として臭覚障害や味覚障害を報告したものはなかった。次も診断(2,血液検査)です。Q;血液検査は熱中症とCOVID‐19の鑑別に有用か?A;両者の鑑別に有用な血液検査の検査項目はない。解説;COVID‐19で、Dダイマー上昇が29.7%に合併すると報告されているが、熱中症でも上昇する。LDH、CK上昇も両者に認められ、熱中症に特異的と考えられるバイオマーカーはない。次も診断(3、CT検査)です。Q;高体温、意識障害で熱中症を疑う患者のCT検査はCOVID‐19の鑑別診断に有用か?A;除外診断に一定の役割を果たしうるためスクリーニング検査として実施することが望ましい。解説;COVD‐19では末梢優位、両側性の病変分布、すりガラス様陰影、小葉間隔壁の肥厚といった比較的特徴的な画像所見が見られるため、診断の一助となる。しかし、臨床症状、PCR検査などの結果を総合的に判断する。次は、治療(冷却法)です。Q;従来同様、蒸散冷却法を用いて、患者を冷却してよいか?A;蒸散冷却法は原則使用しない。解説;SARS‐CoV‐2は熱中症患者の体表面や呼気に存在し、扇風機などの蒸散冷却法を用いると、エアロゾルを介して広範囲に感染が拡大するため、冷水シャワー・局所冷却・クーリングマットなどの冷却法を使用することが望ましい。以上ざっとご説明しましたが、救急隊員も担当する医師も過去に経験がありません。しばらくは、手探りの対応が続きます。


2020.7.31. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

|| HOME || 診療のご案内 || ドクタープロフィール || 人間ドック・脳ドッグ || アレルギー専門外来 || ペインクリニック ||

|| 東京保険医新聞より || ドクターコラム || アレルギーQ&A || 新型コロナウイルス || お知らせ || 地図 || Link ||

Copyright (C) HIKAWADAINAIKA CLINIC