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新型コロナウイルス その30 うがい


 以前「新型コロナウイルス その19 内在性ウイルス」にも書きましたが、ヒトの遺伝子配列の約8%はウイルス由来です。それらのウイルスの断片がなければヒトは存在しないといっても過言ではありません。1000兆個ある腸内細菌ひとつとっても、ヒトの免疫ネットワークに重要な役割をしています。女性に多い膀胱炎は厄介な病気ですが、膀胱内は細菌だらけです。私は以前自分の尿にどのくらい細菌がいるか検査したことがあります。1μlあたり100万個ありました。しかし、症状は全くありません。これらの細菌と絶妙に折り合いをつけているのです。膀胱炎になると抗生物質をもらいますが、膀胱内の細菌を全滅させているわけではありません。人体をよく観察すると、「穴」があります。口の「穴」、耳の「穴」、目の「穴」、鼻の「穴」、お尻の肛門の「穴」、女性器の「穴」、尿道の出口の「穴」、毛の「穴」です。細菌やウイルスなどの病原体はこれらの「穴」を突破口にしてヒトに侵入します。これらの「穴」に存在するヒトの免疫機構を「一次感染巣」といいます。その「穴」の先には生命にかかわる肺や脳、心臓、腎臓、消化管などの大切な臓器があります。これらを「二次感染巣」といいます。肺炎を例にとって説明します。「一次感染巣」の口腔内は咽頭、扁桃などの臓器があります。まず、ここに細菌やウイルスなどの病原体あるいはアレルゲンが侵入します。この領域には粘液系と全身系の免疫機構がバランスよく構成されています。粘液系では、まず唾液中のIgAが分泌されます。その制御と誘導にCD4陽性T細胞から産生されるTh1型(IFN‐γ、IL‐2、IFN‐β)サイトカインやTh2型(IL‐4、IL‐5、IL?6、IL‐10)サイトカインが重要な役割をしています。細菌やウイルスに対してはTh1型サイトカインが産生されますが、アレルギーに対してはTh2型サイトカインが多く産生されます。また、これ以上侵入させても問題がない経口免疫寛容状態も作り出します。これを抗原特異的全身系免疫応答といいます。これらの「一次感染巣」での症状は発熱、悪寒、咽頭痛、頭痛、全身倦怠感などのいわゆる風邪症状です。ほとんどの人はここで細菌やウイルスの進行を食い止めます。ここで食い止められなければ、次に「二次感染巣」に侵入し、肺炎を引き起こします。「一次感染巣」は領域が小さいですが、「二次感染巣」は領域がとてつもなく広く、ヒトの肺胞を広げればテニスコート半分以上にもなります。ここに細菌やウイルスがはびこっている姿は想像できませんが、肺組織はガス交換をする重要な場所です。新型コロナウイルスはこの組織の肺胞や、間質に浸潤し、破壊していきます。その先に行くと感染性心内膜炎、DIC(血管内播種性凝固症候群)、敗血症へと進んでいきます。ヒトの免疫機能は自然免疫と獲得免役の二段構えで構成されています。新型コロナウイルスも大半は自然免疫で撃退できます。自然免疫を乗り越え、たとえ「一次感染巣」に深く侵入したとしても、口の「穴」ではIgA抗体やTh1型サイトカインで撃退できます。この大事な免疫機構を壊してしまうのが「うがい」です。日本では外から帰ったら「うがい」と「手洗い」と、保育園・小学校の頃から、先生や親に口酸っぱくいわれて育ちました。これは、まだ日本中に結核菌やライ菌などが蔓延していたころの習慣の名残ではないかと思います。欧米では人前で「うがい」をしたりはしません。おそらく日本独特の風習と思われます。文献をみても、数万人、数十万人を対象にした大規模スタディーはありません。私は医師になってかれこれ40年近くなりますが、風邪のための「うがい」薬を出したことは一度もありません。


2020.8.7. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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