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新型コロナウイルス その34 コッホの4原則


 新型コロナウイルスが「コッホの4原則」を満たしていないとして、存在そのものを否定しているウイルス学者がいます。コッホは1874年に初めて炭疽菌を発見しました。分離培養してそれを動物に接種して炭疽をおこさせて、その病巣部から炭疽菌が分離できることを明らかにしました。同じ方法で結核菌やコレラ菌を発見しました。まだ電子顕微鏡が発明されておらず、ウイルスの存在が知られていない時代です。1.ある病気には一定の微生物が見いだされること 2.その微生物を分離できること 3.分離した微生物を感受性のある動物に感染させて同じ病気を起こせること 4.そしてその病巣部から同じ微生物が分離されること これが「コッホの4原則」です。フランス、パスツール研究所のリュック・アントワーヌ・モンタニエは1983年、エイズの原因となるレトロウイルスHIVを発見し、2008年にノーベル生理・医学賞を授与されていますが、動物への感染実験は成功していません。したがってコッホの4原則を満たしていませんが、エイズの原因がHIVであるということは疫学の上から明らかで、これを否定した南アフリカでは2000年から2005年にかけて35万人がエイズで死亡しています。今では治療法も確立されており、世界でコッホの4原則を持ち出す医師は前前回「新型コロナウイルス その32 マリス博士の遺言」でお話ししたキャリー・マリスぐらいです。1月7日に「Nature」に掲載され、今回のコロナ騒動のもとになった中国の論文「A new coronavirus associated with human respiratory disease in China」を紐解きます。患者は既往歴のない41歳の男性で、2019年12月20日に発症し、26日に武漢中央病院に入院しています。魚介類やハリネズミ、アナグマ、へビ、鳥などを販売する野生動物市場で働いていましたが、コウモリは売っていなかったということです。入院時38.4℃の発熱、咳嗽、呼吸困難があり、白血球、血小板、その他の生化学検査LDH、CKなどは正常でしたが、リンパ球分画が高く、CRPが41.4mg/dlと上昇していました。血中酸素飽和度SpO2は67mmHgと低下していました。胸部X線撮影・CT検査で両側に間質性の陰影が認められました。入院時に気管支鏡が行われ、BALF(気管支肺胞洗浄液)200μlを分析しました。分析方法はショットガン・シーケンス法でアメリカ、イルミナ社のMiniSeqを使用しています。30Kbの遺伝子配列を2Kbほどの短さにショットガンで細切れに取り出し、その一片の両断端の300ペアほどをもとにコンピューターでアライメントしていきます。その全ゲノム配列は29,903ntでGenBankにMN908943として新たに登録されました。不思議なことに、この論文に「コッホの4原則」の1.がどこにも見当たりません。原因ウイルスがBALF中にいるというだけで、何のウイルスを遺伝子解析したか書かれていません。ちなみに、その時インフルエンザ、マイコプラズマ、アデノウイルスなどはPCR検査で否定されています。その後、抗生物質、抗ウイルス薬、グルココルチコイド(副腎皮質ホルモン)などが投与されましたが、3日目にはICU(集中治療室)に入り、6日目には別の病院に搬送され、その後の経過は書かれていません。BALFは通常50mlほどの生理食塩水で行いますが、どのように処理して200μlを取り出したかも書かれていません。その2週間後、WHOがなぜCOVID‐19の原因に指定したのかもよく分かりません。しかし、感染は世界に広がっていきました。子宮頸がんの原因、ヒトパピローマウイルスも胃がんの原因、ヘリコバクター・ピロリ菌も「コッホの4原則」をすべて満たしているわけではありませんが、歴史上、これまで病原体の存在しない感染症はありません。


2020.9.1. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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