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新型コロナウイルス その35 インフルエンザ


 日本感染症学会が今冬、新型コロナウイルスの流行が収まらない中、インフルエンザの流行に備え提言を出しました。「インフルエンザの流行期と重なり、重大な事態になることが危惧される」と警鐘を鳴らし、「臨床症状のみで両者を区別することは困難」で、「できるだけ両方の検査を行うことが必要」としています。両方の検体を同時採取することは不可能ではありませんが、感染の機会も増えますし、そこでクラスターが発生してもおかしくない状況になる可能性もあります。死亡診断書に主病名を書く欄と合併症を書く欄があります。日本ではインフルエンザが主病名で亡くなる人は毎年数千人に上りますが、主病名が肺炎やがん、心臓病で、合併症がインフルエンザの診断書は3万人をはるかに超えます。それだけインフルエンザは怖い病気です。新型コロナウイルスもインフルエンザも致死率は0.02〜0.04%ですが、合併症を考えればインフルエンザの方がはるかに怖い病気です。今年1〜3月、インフルエンザの流行が少なかったのは、新型コロナウイルス感染が拡大し、「3蜜」を避け、マスクを着け、ソーシャルディスタンスを保ったためもありますが、それだけではありません。ウイルスが細胞に侵入するとき同じ経路を通り、同じ免疫応答が起こります。これを「ウイルス干渉」と呼び、先に新型コロナウイルスが流行したため、インフルエンザが流行しなかったとするウイルス学者もいます。それでも今年上半期の死因別ランキングは新型コロナウイルスが第41位、インフルエンザは37位です。アメリカではこのコロナ禍の中、インフルエンザの感染者は今年3900万人を超え死者も2万人を超えています。死者数が少ないのは、このうちPCR検査で新型コロナウイルスが見つかると、死因がコロナ関連死と換算されるからです。PCR検査は特異性が高すぎて、免疫能力の落ちた患者さんをすべて拾ってしまう可能性があります。したがって、感染の主病因でないにも関わらずPCR検査で陽性になる可能性があります。今冬はまず、毎年やってくるインフルエンザに備えてワクチンを接種しておくことが重要と考えます。また抗体価を高めるため、およそ4週間後にもう一度接種しておく(ブースター効果)のが賢明です。インフルエンザにはいくつかの対処薬もありますので、重症化せずに緩解します。この時同時にPCR検査をしても意味はありません。PCR検査はウイルスの間違ったプライマーが2コピーでもあれば、数百万倍、数千万倍に増幅して陽性にしてしまいます。新型コロナウイルスの増殖速度は非常に遅くインフルエンザの1万分の1です。発熱、悪寒、咳、咽頭痛があれば、まずインフルエンザを疑って検査・治療することが第一です。もう一つ気がかりなことがあります。最近イギリスで中等症以上のCOVID‐19患者にデキサメタゾン(副腎皮質ホルモン)が有効という報告があり、治療に使われています。これはインフルエンザには無効でないばかりか、悪化する可能性があります。この点では、やはり両者を区別する必要があります。一般的には、その医療機関がカバーする地域で新型コロナウイルス感染者のクラスターが発生してなければ、インフルエンザの検査・治療を優先するのが正しいやり方と思います。特に子供間でのクラスター発生はありませんので、風邪症状で発熱があれば、PCR検査は必要ありません。今世界全体が「コロナうつ」の状態です。日本には美しい四季があります。毎年これを享受するためには、間違ったメディアの情報に惑わされないで日常を過ごすことが重要です。「人生の目的」は「幸せになること」です。PCR検査をしてコロナ患者を見つけること、コロナに感染しないことが「人生の目的」になっている人があまりにも多すぎます。


2020.9.5. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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