非特異的変調療法(非特異的減感作療法)
今日はアレルギー疾患の基礎的療法、非特異的変調療法についてお話します。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、慢性蕁麻疹などアレルギー疾患の治療はこの10年ほどの間に大きくかわってきました。それはアレルギーが慢性の炎症であるとの認識が広く知られるようになってきたからです。治療も抗アレルギー剤に加えてステロイド、抗炎症薬等が次々に開発され、アレルギーを根治するという考えよりもコントロールするという考えに変わってきました。実際小児でも、成人でもタイプがどうであれ、早期に十分量のステロイド、抗炎症薬を使うとアレルギ―性炎症は遷延せず、根治に近い状態になります。したがって炎症が落ち着いた人では根本的な基礎的治療そのものが必要でなくなります。しかし、くすりを飲んでいる間は症状が軽快するがやめるとまた増悪するというような人にはこの非特異的変調療法が有効な場合があります。
何らかのアレルゲンに対して特異的IgEが確定すれば特異的減感作療法をおこないます。これが唯一の治療法であることは以前お話したとうりです。しかしIgEを測定しても原因がつかめず炎症の遷延する人がいます。こういう人はずっと抗アレルギー剤を使って炎症を押さえるといった対症療法をすることになります。T型アレルギーではタイプがどうであれ何らかのアレルゲンがIgE抗体を介して肥満細胞にその情報が伝わります。この肥満細胞が気管支粘膜下や鼻粘膜下で脱顆粒を起こします。この中のヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学物質が粘膜を傷害します。非特異的変調療法は肥満細胞の膜を安定化させ脱顆粒を防ぐといわれていますが、実際には何らかの免疫変調を期待するといった方が良いとおもいます。
よく使われる薬剤としてはヒスタグロビン、金製剤、MSアンチゲン、マクロライドなどがあります。注射薬剤は、週1,2回の皮下注射を平均10回前後行います。どの薬剤をどの程度の期間使うか、またその効果についてはその人の臨床症状、罹病期間、治療歴、年齢、生活環境等で異なります。以前にステロイド治療をしたことがあるか、減感作療法をしたことがあるかなども問題になります。副作用はまれですが、薬剤により局所の発赤、腫脹や肝機能障害などの全身症状の出ることがあります。基本的には薬剤を中止すればよくなります。また、初回、2回目の注射で一時的に症状が増悪することがありますが、これは問題ありません。
今日各アレルギー疾患の治療に関するプロトコールは殆ど確立された感があります。しかし患者はどんどん増え続けています。原因としては食事の欧米化、衛生環境のクリーン化、大気汚染、地球温暖化、オゾン層の破壊、スギ花粉の増加、BCG摂取率の低下、結果的に体質が変わってしまうことなどが考えられます。といっても何一つすぐに改善できるものはありません。炎症の火種をできるだけ早期に水際で食い止めるために非特異的変調療法は有効な手段の一つです。アレルギーについてまた機会があったらお話します。
2005.1.28. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
|