新型コロナウイルス その50 ヒトゲノム
染色体は遺伝情報の発現と伝達をする生体物質です。塩基性の色素でよく染色されることから、1888年、ヴィルヘルム・フォン・ヴァルデヤーによって、Chromozomeと名付けられました。ある生物の染色体を調べたい時、コルヒチン等の薬剤で細胞を処理し細胞をM期で停止させてからギムザ染色を施し、凝縮した染色体の数と形状を観察します。こうして撮影された染色体を並べたものが、核型=カプリオタイプです。これを分析して、分類学的検討を行うことを核型分析と言います。カプリオタイプは種ごとに一定で、ヒトは22対の常染色体と1対の性染色体、計46本の染色体をもっています。女性は2本のX染色体、男性ではX染色体とY染色体を1本ずつ持っています。「新型コロナウイルス その15 内在性ウイルス」にも書きましたが、ヒトゲノムの約8%はウイルス由来です。特にレトロウイルスは1億6000万年前に「PEG10」という遺伝子を哺乳類の祖先に持ち込み、胎盤ができるようになりました。話は変わりますが、感染研のPCRマニュアルはNestedPCRで新型コロナウイルスの遺伝子の一番端の部分、スパイクタンパクの20塩基を使用し、増幅しています。これを並べると、GAGGAACGAGAAGAGGCTTGですが、最初の16塩基がヒトの第8染色体のGAGGAACGAGAAGAGGと一致しています。カプシド領域を使うと、CACATTGGCACCCGCAATCとなりますが、最後の16塩基がヒトの第10染色体、ATTGGCACCCGCAATCと一致します。一般に行われているリアルタイムPCRは真ん中の部分とカプシド領域のCTCCCTTTGTTGTGTTGTを使いますが、最後の16塩基、CCCTTTGTTGTGTTGTが、ヒトの第11染色体の塩基と一致します。また、最後の15塩基、CCTTTGTTGTGTTGTが、ヒトの第6染色体の塩基と一致します。PCRはもともと遺伝子塩基の一部を切り取って増幅する検査です。増幅する塩基の数はせいぜい20個程度で、これを双方向に並べてプライマーとし、数百万倍に増やします。たまたま、40サイクル回したところで、ヒトの染色体と一致する部分が現れるとPCR陽性になります。こういったことは当然避けなければなりませんが、新型コロナウイルス遺伝子のどこの部分の塩基を切り取ってきてプライマーとして使うかは、各国、各検査会社によって違います。検査技師が20サイクル回して、同じような遺伝子が見つかれば、そこで陽性と判断します。要は陽性となるまで回せばいいわけで、その中にヒトの遺伝子と相同性のある塩基配列が見つかれば、これも陽性と判断されます。先日、埼玉の劇団員の一人がスマホの接触アプリ「COCOA」を見ていました。症状は何もありませんでしたが、PCR陽性者と濃厚接触が疑われたため検査に行き、そこで陽性と診断されました。稽古場にいた90人も検査を受けました。そのうち62人の感染が確認されました。ほとんど全員が無症状ということです。PCRには落とし穴がたくさんあります。PCRで陽性になる人の95%は無症状です。そもそも武漢で発生したウイルスはすでに変異を繰り返し、変異率はクルーズ船がやってきた時点ですでに2%、緊急事態宣言が出された4月で5%を超えています。この後、急速に検出率は低下します。10カ月が経過し、PCRで検出することは100%不可能に近いと思われます。もはやPCRが何の遺伝子を検出しているかわかりません。国や自治体は積極的にPCR陽性者をあぶりだし、隔離しようとしています。全く無駄な出費です。検査技師が、陽性反応が出るまで40回も回せば、もしかしたら、「ヒトゲノム」を検出している可能性も否定できません。繰り返しになりますが、PCRは感染症の診断には不向きです。
2020.10.11. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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