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新型コロナウイルス その52 抗ウイルス薬


 今日は抗ウイルス薬についてお話してみたいと思います。ウイルスは自身の細胞を持っていないため、抗生物質のように細胞の外からウイルスを攻撃することはできません。どうしても細胞内に入る必要があります。方法としては遺伝子の単位であるヌクレオチドに類似した偽ヌクレオチドを使って防御するか、遺伝子RNAを合成する酵素であるRNAポリメラーゼを阻害する方法しかありません。いずれにしても抗ウイルス薬は細胞内に入って初めて作用します。ウイルスに感染した細胞だけに作用すればいいのですが、抗ウイルス薬はヒトのすべての細胞に入ります。私たちの細胞は骨髄の幹細胞から分化してできています。骨髄幹細胞は大きく分けて、血液幹細胞と上皮系幹細胞に分かれます。血液幹細胞はまた分裂して、最終的には赤血球、血小板、白血球に分かれていきます。白血球の中には免疫担当細胞などのリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞など)、マクロファージや好中球などがあります。上皮系細胞は上皮細胞や粘液細胞に分化していきます。赤血球の寿命は120日で、脾臓で破壊されます。血小板の寿命は10日です。白血球は好中球、好酸球、好塩基球などの顆粒球が2日から14日程度、リンパ球は寿命が数十年に及ぶものがあります。上皮細胞や粘液細胞は1週間程度で新しいものに入れ替わります。いずれの細胞も分化の過程で分裂の非常に速い増殖期があります。抗ウイルス薬はこの時期に効率よく細胞内に取り込まれます。分化の終わった成熟した細胞に取りこまれる率は非常に小さいと考えられます。新型コロナウイルスの増殖速度はインフルエンザの1万分の1です。非常にゆっくりした速度で増殖します。インフルエンザウイルスは1個のウイルスが気道粘膜上で、6時間も経過すれば100万から1000万個に増殖します。新型コロナウイルスは1個のウイルスが100個に増殖するのに1週間かかります。非常にゆっくりしたペースで増殖します。端的に言えば、上皮系幹細胞が成熟した気道粘膜の細胞になる速度よりも遅く、抗ウイルス薬が作用する時間がありません。細胞の分化増殖期にはまだ数個のウイルスしかなく、感染源となりえないため、抗ウイルス薬が効きません。偽ヌクレオチドには「レムでシビル」、RNAポリメラーゼ阻害薬には「アビガン」があります。それぞれ、劇的に効いたという報告はありません。レムデシビルで4日程度回復が早まった。アビガンでは効果は期待できないという報告があいついでいます。私はレムデシビルが効いたのではなくて自然免疫でよくなったのではないかと考えています。アビガンがインフルエンザに有効なのは、インフルエンザウイルスが気道粘膜の分化増殖期に、1日で数億個に増えるため、細胞内に取り込まれやすいからです。抗がん剤にも同様のことが考えられます。がん細胞の増殖速度が非常に速いため、ガンに侵された細胞に抗がん剤が効率よく取り込まれやすいからです。こう考えると、新型コロナウイルスに抗ウイルス薬は効果がない、ということになります。そればかりか、分化増殖期の細胞に取りこまれ、正常な細胞免疫機能にも影響が出る可能性があります。これからインフルエンザが流行ってくる時期に入りますが、インフルエンザが気道粘膜上に1億個ある時、新型コロナウイルスはせいぜい数個か数十個しかいません。それでもPCRで数百万倍に増やして、インフルエンザと同じように陽性としてしまいます。日本感染症学会は両方の検査を推奨するとする提言を出しています。しかし、新型コロナウイルスの増殖速度やウイルス量を考えれば、インフルエンザの流行期に、もしも高熱や咳嗽、咽頭痛があれば、第一にインフルエンザを考えるべきです。


2020.10.14. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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