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新型コロナウイルス その54 ウイルス対策ソフト


 先日、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学が、新型コロナウイルス感染者が4000万人を超えたと発表しました。正確にはPCR陽性者が4000万人を超えたと言うべきところです。現在感染診断にPCR検査がゴールデンスタンダードとなっています。世界の指導者はこれを金科玉条とし、やめる気配は全くありません。世界の隅々までいってPCRを行っています。PCR検査は3万塩基ほどのウイルスの断片を100個とってきて、ただひたすら熱を加えて、繰り返し増幅する検査です。国によっても、検査会社によっても取り出す断片はバラバラです。この中に、中国発のウイルスと類似した塩基が見つかれば陽性と診断します。もし仮に、サイクルを100回に設定すれば、地球上の70憶人ばかりでなく、動植物もすべて陽性にしてしまう可能性さえあります。PCRの発明者、キャリー・マリスは、感染症の診断にPCRを使ってはならないと繰り返し講演で述べていました。中国発の新型コロナウイルスはRNAウイルスで変異が激しく、日本で緊急事態宣言が出された4月7日時点で、すでに5%の変異を起こしています。これを過ぎればPCRの検出率は急速に低下していきます。すでに10カ月が過ぎ、今何を検出しているのか誰にもわからなくなっています。それでも、PCR検査は続いています。毎日熱を測るように会社から言われた既往歴のない健康な30代の男性が、体温表を持って受診しました。確かに、どんどん熱が上がっています。全身倦怠感、咳、頭痛も出てきました。37.5度を超えた時点で会社には出勤停止を告げられました。とうとう38度を超える日も見られるようになりました。血液検査で、白血球もCRPも血沈も、その他の生化学所見もすべて正常です。胸部X線撮影でも異常は見当たりません。PCR検査も陰性でした。私はこの患者さんに、体温を測るのを止めるように説得しました。会社には悪いですが、熱が37度を超えても、毎日35〜6度台の「ウソの体温表」を報告するように指示しました。毎日気にして体温を測り続ければ、交感神経が刺激されて、だんだん体温が上がってきます。幸い、この患者さんの経過は良好で仕事に復帰できるようになりました。「ウソの体温表」が効を奏しました。電車で隣の人が咳をしていると、ウイルスに感染しているのではないか。歩いている人がマスクをしてないと、できるだけ離れて通る。外国の人を見かけると、何となくウイルスを持ち込んでいるのではないかと思ってしまう。お金を扱う時、このお金にウイルスがついているのではないかと考え、手袋が手放せない。外から帰ったら手の皮が擦り切れるほど、消毒する。感染拡大のニュースをついつい見てしまい、いつ自分がかかるか不安でしようがない。計画していた旅行を取りやめてしまった。マスクを1日に何枚も取り換える。こんな人があちらにもこちらにもいます。これこそが、新型コロナウイルスの戦略で、全世界が「思考停止」状態に陥っています。物理的なダメージが大きかったこれまでのパンデミックと大きく違うところです。コンピューターがウイルスに感染すると「誤作動」を起こし、最悪の場合はダウンしてしまいます。コンピューターウイルスには幸い「ウイルス対策ソフト」があります。侵入したウイルスをそのコードのパターンや動きから特定し、それを拡散しないように「隔離」します。またその効果を発揮する前提として、常にOSなどの基本的なソフトウエアを最新のものにアップデートし、脆弱性を少しでも下げておく必要があります。人も同じです。ハード(PCR)は変えられません。最新の情報(OS)にアップデートし、自ら思考停止に陥らないよう、「誤作動」には今のところ「誤作動」(ウソの体温表)で対処するしかありません。これが人の「ウイルス対策ソフト」です。


2020.10.20. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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