新型コロナウイルス その59 常在性ウイルス
私がまだ、九州大学医学部胸部疾患研究施設にいた頃、壱岐の島の病院にアルバイトに行っていました。高速フェリー・ヴィーナスで博多湾の築港から郷ノ浦までおよそ1時間です。週に1度、朝から仕事をして当直し、翌日また1日仕事をして帰るという生活を2年ほど続けていました。年末年始、大学病院は休みなので、島に泊まり込んで仕事をしていました。私のような釣り好きには天国のような所で、透明度は海が澄んでいれば、水面下20mでクロ(関西名;グレ、関東名;メジナ)が泳いでいるのがわかります。正月3日、午後から休みだったので、病院の車で送ってもらって、島の反対側に釣りに出かけました。釣り始めて間もなく小雨が降り始めました。携帯電話もない時代でしたから、寒い中釣りをしながら、帰りの時間を待つしかありませんでした。迎えの車が来た時には、すっかり日が暮れていました。数日後に何となく食欲がなく、倦怠感、熱感がありました。胸部]線検査で肺炎が見つかりました。私は1週間の休みをもらって、福岡市の自宅で、自分で点滴をして治しました。原因はおそらく、1月の寒い中、半日凍える体で釣りをしていて免疫が低下したため、常在菌が繁殖して肺炎を起こしたのではないかと思っています。肺炎は必ずしも、誰かにもらうわけではありません。ほとんどが、過労や睡眠不足、糖尿病や心臓病などの基礎疾患が悪化した時、免疫が低下した時、常在しているウイルスや細菌が繁殖して起こします。患者さんが肺炎になった時、他人にうつすことを心配する人がいます。仕事や学校に行っていいか、家でもマスクをする必要があるか、小さな子供がいるので自分は離れていた方がいいか、風呂に入っていいか、運動していいか、などと質問は尽きません。私はそう質問してくる患者さんに、日常を変える必要はありません。自分の状態は本人しかわかりません。仕事ができるようであれば、仕事に行ってください。マスクは必要ありません。家でも会社でも普段どおりの生活をしてください。他人にうつす心配をする必要はありません、と答えています。なぜなら、市中肺炎の原因の8割は常在性のウイルスや細菌です。結核やマイコプラズマなどは他人にうつしますが、胸部X線を見れば特徴的な影なので、専門医が見ればすぐにわかります。通常の肺炎は数日から1週間程度で必ず回復します。科学に真実は一つしかありません。ネットの書き込みもメディアも信用できません。唯一科学論文だけが頼りです。1月7日に「Nature」に掲載された論文では、肺炎の患者の肺の抽出液200μlを、そのまま取ってきて、3万塩基のおよそ100塩基を使ってリアルタイムPCRで確認しています。ウイルス全体の遺伝子配列ではありません。これをGenBankに登録しました。「新型」ウイルスを発見したとはどこにも書いていません。WHOが「新型」と認定しただけです。アカゲザルやカニクイザル、犬、猫、モルモットを使った感染実験もすべてPCRで行っています。感染させた動物の病変局所からサンプルをとって遺伝子同定しているわけではありません。ドイツや中国の死体解剖も同じです。伝搬性は患者の咽頭ぬぐい液からウイルスをとってきて遺伝子同定すれば簡単なことですが、これができていません。このどれもが「コッホの4原則」を満たしていません。このような感染症は過去にありません。PCRの特異度は99%ですが、これは日本人1憶2千万全員を調べれば、120万人が陽性になるということです。およそ1年が経過し、RNAウイルスは数万回変異しています。PCRのプライマーとなる遺伝子のアミノ酸には159万種類の同義置換体があります。今回のウイルスが「新型」ではなくて「常在性」でないと、どうしても説明がつきません。
2020.11.1. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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