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新型コロナウイルス その66 インパクトファクター


 2013年に、細胞内分子輸送路を制御するメカニズムの発見によりノーべル医学生理学賞を受賞したアメリカのランディ・シェックマンは、主要な国際学術雑誌である「Nature」「Cell」「Science」に対して「科学は危機に瀕している。閉鎖的なカーストの手に握られ、独立性があるとはいいがたく、もはや信用できない」と語っています。彼らは科学的重要性よりも、研究のメディア的なアピールを基準にして出版を行う。研究者の側もその権威のため、掲載してもらうために何でもする(自分たちの研究結果の改変さえする)傾向がある。こうした雑誌は政府や機関の選択に影響を与えて、一人の研究者や一つの研究の運命を変えることができる。雑誌側は自分たちの威信を濫用して科学的プロセスを捻じ曲げていて、科学のために打ち砕かなければならない圧政となっている。自分の研究がこうした雑誌に掲載されるのを見たいという誘惑は研究結果を改変し、より魅力的で「流行」に合ったものにするように研究者たちを追いやっている。こうしたことにより、トレンディではないけれども科学の進歩のために決定的となる発見が犠牲になるかもしれない。雑誌の編集者は科学者ではないので、研究の内的価値よりもスクープを優先して考える。まずはお金で、研究はそのあとだ。こうした一流の雑誌に掲載される栄誉のために、中国科学アカデミーのような機関が、専門性にかかわらず論文が掲載されるという大仕事に成功した研究者に3万ドルも支払っている。そして、こうした報奨金が給料の半分になる研究者もいる。「ウォール街が莫大な給料を払う文化を止めなければならないのと同じように、科学は贅沢雑誌の圧政に従うのをやめなくてはならない。」と述べています。「Nature」の編集長、フィリップ・キャンベルは「私たちは140年以上、科学的重要性を基準にして出版すべき研究を選択してきました。私たちが著者や批評家から受ける支持が、私たちが必要としている唯一の裏付けです。このことは、ある種のメディア的な成功をもたらすことがあります。しかし、私たち編集者は、これを仕事の目的とは考えていません。」と反論しています。とはいえ、研究の信頼性が、それを出版する雑誌を通して得られることは間違いのない事実です。当のNature Publishing Groupが、2万人以上の研究者に対して行ったアンケートの結果を発表しています。それによると、自分の研究を提出する雑誌を選ぶために重要と判断される基準は、雑誌の評判、彼らが研究をしている分野にどれくらいの重要性があたえられているか、そしてインパクトファクター(自然科学・社会科学分野の学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標)だという。最後のものは「求心力」、つまりある研究が一般的な関心や、メディア的な露出を引き起こすことのできる可能性のことだ。シェックマンはカリフォルニア大学バークレー校にある自分の研究室からこれらの雑誌に投稿することを止めています。すべての科学コミュニティーのメンバーが「eLife」にオープンアクセスできるようにしています。しかし、「Nature」の創刊は1869年、「Science」の創刊は1880年です。一人の科学者が絶縁宣言しても、これらの雑誌の社会的影響は計り知れません。先日のNHKスペシャルでも、今年1月7日に「Nature」に掲載された中国の論文は、すでに世界で20万本の論文に引用されていることがAIによりわかりました。昨年12月26日に、41歳の男性患者が武漢中央病院に入院した時、すでに1,975例の肺炎患者が報告されていました。疫学的調査では武漢のシーフード市場に関連しているとしています。急いで、関連性を特定する必要がありました。肺の洗浄液からわずか200μlを抽出して、PCRで未知のウイルスの遺伝子として雑誌に投稿しました。その間わずか10日です。「Nature」誌にとっては格好のスクープ論文だったに違いありません。


2020.11.24. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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