新型コロナウイルス その70 抗原検査
感染症にはそれぞれ症状があります。症状のない感染症はこれまで経験されてきませんでした。現在の新型コロナウイルス感染症は、さながらPCR感染症といったほうがいい状況です。ただひたすらPCRを行い感染者扱いしています。病院経営が悪化する中、ある診療所では毎日数百人のPCRを行い、今では御殿のような病院ができています。いわばPCRバブル病院です。ほとんどの会社経営が傾いている中、テレワークやリモート会議を行うためのクラウドサービスを手掛ける会社だけが、高収入を得ています。とてもおかしな世の中です。本題の抗原検査ですが、今年6月16日からPCRと同時に抗原検査ができるようになりました。感度や特異度ははるかにPCRに及びませんが、病気の症状を説明するのにはこちらの方がより診断の有効性が高いというお話です。5月13日に厚生労働省が富士レビオの「SARS ̄CoV ̄2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」を出しました。添付文書によると、PCRで8コピー以下を除き、それ以上100万コピーが1人、1000万コピーが1人、317人を調べました。症状が出現するためには、およそ100万コピー以上のウイルス量が必要と思われますので、ほとんどが無症状のPCR陽性者です。そのうち抗原検査で陽性になったのが、22人です。したがって、抗原検査陽性者数は22/317、PCR陽性者の7%ということになります。また、有症状者は2人ですので、抗原検査の有効率は2/22=9%ということになります。PCR検査の有効率は2/317=0.63%です。抗原検査有効率/PCR有効率は9/0.63=14.3倍で、抗原検査の方がより症状を確実に反映していることになります。PCRは1月7日に「Nature」に掲載された論文の新型コロナウイルスの3万塩基のスパイクタンパク質の断片、およそ80コピーをとってきて、プライマーとし、それと反応する遺伝子をただひたすら、45回増幅して診断します。プライマーがもしも間違っていたら、間違った遺伝子を拾ってしまいます。国や会社によっても、検査する技師によってもどれをプライマーとするかで変わってきます。それによって反応する遺伝子も変わってきます。感染研のネスティッドという方法はわずか2コピーを2段階で増幅します。SARS ̄CoV ̄2と名付けられたのは、8割がSARSの遺伝子と一致するからで、その他の風邪のコロナウイルスには反応しない、としています。しかし、近縁種のコロナウイルスは数万種類あり、サルや犬、猫、マウス、モルモット、その他の動植物でも反応します。タンザニアではパパイヤやマンゴー、羊、ヤギでも反応したと、科学者でもある大統領が保険相を非難していました。ただ、抗原検査に全く問題がないわけではありません。抗原検査には抗体を使います。この抗体はモノクローナル抗体です。PCRと同じで似たような遺伝子を拾ってしまう可能性があります。本来であればポリクローナル抗体を使うべきところですが、複雑な工程が必要となり実現しなかったものと思われます。10月28日、日本感染症学会のアンケートで、全国で125件の「擬陽性」が報告されたのは、そのためです。今日現在感染者数は24,063人ですが、これを抗原検査で行うと、1,684人、有症状者はそのうちの9%=151人になります。151人の症状をとらえるために24,063人のPCRを行っているのが現状です。問題はウイルスの増殖速度にも関係します。インフルエンザは咽頭にくっついた1個のウイルスが1億個になるのに半日もあれば十分ですが、新型コロナウイルスの増殖速度は非常に遅くおよそインフルエンザの1万分の1です。潜伏期が最大で14日というのもそのためです。おそらく1億個に増える前にヒトの自然免疫や獲得免役で撃退されてしまいます。咽頭や肺から症状の出現に必要な億単位のウイルスが検出されたという報告はこれまでありません。すべてがPCRで、全く意味のない検査です。
2020.12.7. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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