新型コロナウイルス　その８１　ジェノサイド

　１９４１年８月、ウィンストン・チャーチルがＢＢＣ放送で「我々は名前の無い犯罪に直面している」と言いました。１９４５年のニュルンベルク裁判の検察側最終論告において初めて「ジェノサイド」という言葉が使用されました。１９４８年、国際連合は以下のように定義しています。１．集団構成員を殺すこと　２．集団構成員に対して、重大な肉体的又は精神的な危害を加えること　３．集団に対して故意に、全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を課すること　４．集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること　５．集団の児童を、他の集団に強制的に移すこと　事例として１９３０年代、ソ連による人為的な飢餓と弾圧により４００万〜１４５０万人のウクライナでおこなわれたホロドモール。１９９４年のルワンダの虐殺。ナチスのホロコースト。大日本帝国陸軍によって行われた南京大虐殺。１９９５年に始まったユーゴスラビア紛争における民族浄化（スレブレニツァの虐殺）。最近では新彊ウイグル自治区の問題があります。新彊ウイグル自治区の面積は中国全土の約１／６で日本の約４．５倍です。しかし面積の約１／４が砂漠です。総人口の３分の２は漢族以外の少数民像です。中国共産党が発表した統計年鑑によると、他の少数民族人口が漸増しているにも関わらず、２０１７〜１９年にかけて、新彊ウイグル自治区の総人口が２４４４万６７００人から２５２３万２２００人へと７８万５５００人増加した一方、少数民族人口は１６５４万４８００人から１４８９万９４００人と、１６５万５０００人も激減しています。２００９年、広東でのウイグル人出稼ぎ労働者の処遇をめぐる問題をきっかけにウイグルで衝突が続き、中国共産党は「反テロ」の名のもとに取り締まりを強化しましたが、これが逆に「テロ事件」を誘発することになりました。２０１４年に、習主席の新彊視察の直後に、ウイルムチ南駅で爆破事件が起きました。これ以降、徹底的な「三毒」といわれる「恐怖政治・分裂主義・宗教極端主義」の政策がとられることになりました。米国では２０２０年６月に「ウイグル人権法」が成立し、今年１月１４日「２０２０年中国人権・法治報告書」のなかで、新彊での事態はジェノサイドにあたると批判しました。バイデン政権になってもこれは変わっていません。１９９１年１２月ソビエト連邦が崩壊した時に、１６の国家が誕生しましたが、みな同じトゥルク系イスラム民族です。西欧諸国は批難していますが、同胞である中東の大国サウジアラビア、トルコ、エジプトなどからは批難の声は上がりません。これは経済的に大きく中国に依存しているからです。世界の名だたる企業も例外ではありません。数百万人のウイグル人が中国全土で奴隷として働いているために、製品を安く供給できます。日本がジェノサイドと認定しないのは日本の一部の大手企業も関わっているからです。本題に戻りますが、私には今の新型コロナウイルスによる政府、自治体による隔離政策が、まるで中国共産党のジェノサイドと重なって感じられます。先日も無症状の５６歳の男性が隔離中に脳卒中で亡くなった、という報道がありました。新型コロナウイルス感染症はこんなに怖いというニュースが毎日のように報道されています。全豪オープンテニスに参加する関係者とホテルの従業員の中にＰＣＲ陽性者が数名いたため、選手を含めて、参加者全員およそ６００人が２週間の隔離生活を余儀なくされました。隔離生活がテレビで流れていましたが、屈強な運動選手でさえ体調を崩してしまいます。ましてや、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などの持病がある人が、２週間同じ部屋に隔離されれば、交感神経が過緊張になり、不眠、抑うつ、将来の不安ばかりが増幅してしまいます。ＲＮＡウイルスは血管の内皮細胞にあるＡＣＥ２受容体を介してヒトの細胞内に侵入します。血圧が上昇し脳血管障害を併発することは容易に想像できます。

２０２１．２．２３．　氷川台内科クリニック　院長　櫻田　二友