新型コロナウイルス その84 ネット依存の果て
朝日新聞の社会面に「ネット依存の果て」が連載されています。その5、2011年、国内で初めてネット依存外来を開設した国立病院機構・久里浜医療センターには新規患者が年間250人、再診を含めると2500人になるそうです。7割が中高校生ら未成年で、大半がゲーム依存の男子です。女子は少ないが、SNSや動画への依存が多いそうです。患者が抱える問題は、1、朝起きられない 2、昼夜逆転 3、物を壊す 4、食事をしない 等です。なりやすいリスク要因は、1、開始年齢の早さ 2、対人関係のつまずき 3、友人のいない孤独感 だそうです。センターでは重症者には2カ月の入院治療、スポーツや集団心理療法などのデイケアを行っています。ネット依存の医療施設は全国に89か所ありますが、年々増えています。本題に戻りますが、先日のNHKスペシャルで、浅草寺周辺の創業200年以上の老舗のお店の窮状と、それを救おうとする地元の信用金庫の取り組みが放映されていました。10年後に一括返済の無担保融資です。お店が倒産しても返済の義務はありません。地元商店街にとっても金融機関にとってもイチかバチかの懸けです。今回の感染症を一臨床医の立場から考えてみたいと思います。昨年1月から私が見た肺炎患者(胸部X線撮影またはCT検査で確認)は64人です。1週間経過を見て改善が見られず、紹介入院した患者は2人です。その後2人とも軽快しています。残り62人は当院での外来治療で全員が軽快しています。約7割が肺炎球菌性肺炎で、残りはマイコプラズマ、レジオネラ、EBウイルス、非結核性抗酸菌症の悪化です。64人の肺炎患者のうちPCR陽性者は1人だけです。糖尿病の基礎疾患がありましたが、コロナによる受診控え中に糖尿病が悪化し、肺炎を併発してしまいました。保健所に連絡しましたが、ちょうど緊急事態宣言下で病棟が逼迫していた時で、自宅待機となりました。しかし、1週間後には抗生剤で影は消えました。当院でこの1年間にPCR検査した人は肺炎を含めて122人で、陽性者は6人、全体の5%です。これは全国平均と同じです。パンデミックが起こると前年を上回る死亡者数(超過死亡)が発生するはずですが、20年度は逆に約3万人減少しています。最も減少したのが新型コロナ肺炎以外の肺炎で1万4千人減少しています。インフルエンザによる死亡者も641人で7割減、脳卒中が3,200人,急性心筋梗塞が1,300人減少しています。日本対がん協会によると、20年度に実施した胃や肺などの5つのがんの集団検診数は3割減少です。がんの8割は健診以外で発見されます。受診控えも重なり10年後にはがん生存率が18%減少すると推定されています。現在第4波が発生し、その原因が変異株ではないかとメディアが騒いでいます。たとえばイギリス型のE484Kはおよそ3万塩基のウイルスのスパイクタンパク質の端から484番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からK(リジン)に変わったということです。変異株が増えれば、抗体やワクチンが効きにくい、感染力が増強するというのが、専門家の意見ですが、これらの変異はごく一部で新型コロナウイルスはこの1年の間にすでに数万回の変異を繰り返しています。これはウイルスがヒトと共存するための戦略で、強毒化してヒトが死んでしまえば自分も生き残れません。ヒトもウイルスと同じように共存の道を探すべきで、何が何でも最後の一匹までみつけて、退治してしまおうという姿勢に問題があります。時々遺伝子解析研究者が塩基配列を画面いっぱいに並べて、ここに変異があると得意げに話をする姿がメディアで流れますが、まるで「ネット依存症」の子供と同じです。臨床を知らない研究者の「データ依存の果て」に、毎月200万人以上が失業、2千人以上が自殺、この1年間で倒産した会社は5万社に上ります。この責任は研究者たちを指揮するウイルス学専門家、政治家にあります。
2021.3.30. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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