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新型コロナウイルス その86 線香花火


 3月17日のTHE NEW YORK TIMES紙に以下のようなコラムが掲載されています。2019年12月に核事故が起こったと仮定しよう。ミサイル実験の失敗で核爆発が起き、世界が放射能雲で覆われ、死者は266万人、医療費と経済損失は何兆ドルにものぼり、世界不況を起こしかけた、としたら、今日私たちは何を議論しているだろう。二度と同じことが起きないように、核兵器をめぐる新しいグローバルな枠組みについて話合っているのではないだろうか。こんな核事故に匹敵する状況が自然界で起きた。中国で病原体がコウモリから別の動物へ、そして人間へと移り、さらにグローバル化という急行列車に乗って世界中に苦難と何兆ドルもの損害をもたらしたとみられている。これまでも数十年にわたり、人間と野生生物の不健全な関わりによって感染爆発が引き起こされてきた。エボラ出血熱とSARSはコウモリやハクビシン、エイズウイルスはチンパンジーからだろうとされている。世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言してから1年が経った。「こんなことが二度と起こらないように、私たちはどのような集団行動を求めているのだろうか?」と問うのに良いタイミングだろう。私の知る限り、答は「ない」だ。少なくとも、意義あることは何もない。野生生物の研究者や保護活動家は、こう言うだろう。野生生物に由来する新型コロナウイルスが人類に広がったのは驚くに値しないし、同じような感染爆発がまたすぐに起こりうるのだ、と。そして、動物と自然と人類に関する国際セミナーでは、野生生物と生態系、そして私たちの健康がいかに密接につながっているかが議論されている。私たちは野生生物を食べること、市場で販売していること、残された自然を目もくらむ速さで破壊していること。これらが新しい病原体との遭遇率を大幅に押し上げている。根本原因は、自然と私たちの関係が崩れていることにある。それは人間が地球上の他の生物とは違うという思い上がりによる。森林、淡水系、海洋、草地、そしてそこでの生物多様性は、私たちの生存に欠かせないきれいな大気、きれいな水、気候を安定させる緩衝機能、健全な食べ物を文字通り与えてくれ、ウイルスからも守ってくれるのだ。私たちが自然体系を保護すれば、自然が私たちを守ってくれる。今後の人畜共通感染症の予防策すべてが、この事実を指針とすべきだ。まず、パンデミックを引き起こしうる人畜共通感染症ウイルスの多くが、いわゆる生鮮市場を通じて、人間に広がる可能性を認めること。生鮮市場では、陸地と海岸で捕まえた野生生物と家畜が一緒に、病原体もついたままぎっしりと並べられ、売られていく。中国政府は野生生物を食べることを規制しなければならない。人類が今後このようなサイクルを繰り返さないためには、他に栄養源がある場合に野生生物(特に哺乳類と鳥類)を売る市場を閉鎖すべきである。世界には生き延びるために野生生物を食べざるを得ない人々もいる、しかし、豊かな国々は、野生生物を扱う違法なサプライチェーンを一掃する国際刑事警察機構などに取り組む必要がある。取引業者とそれに手を貸す腐敗した政府の役人は長きにわたり、野生生物の販売によるもうけを私物化してきた。そして、生き物がウイルスを広げると、損失は社会に負担させるのだ。米国は、違法な野生生物取引を止めようとしない国に対して、合法的な通商もすべて禁止することを迫るべきである。野放しの核兵器は危険だ。最後に森林破壊がある。ブラジルが熱帯雨林でしていること、米国の都市拡大、中国が原生自然地域にまで急速に都市化を進めていることは全人類の問題だ。これら3カ国はいずれも、自然の緩衝帯をなくし、野生生物との接点を広げている。それは止めなければならない、と演繹法で論評していますが、大前提が間違っています。この1年で人類がしたことはPCRを使って「線香花火」を「核爆弾」にしただけです。


2021.4.5. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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