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新型コロナウイルス その89 ウイルス干渉


 昨年夏の終わり頃に、秋・冬に向けて毎年流行るインフルエンザと新型コロナウイルスの同時感染、ツインデミックが心配されました。しかし、過ぎてしまえば、インフルエンザの感染は例年の0.02%に満たず、毎日全国で数十万人が感染した一昨年までとは全く異なる状況となりました。その他、冬に流行するライノウイルス、RSウイルス、手足口病、パラインフルエンザなども激減しました。専門家の考えは新型コロナ対策が功を奏したのと同時に、その要因に「ウイルス干渉」が起こったと指摘しています。これらRNAウイルスは咽頭や気道粘膜のACE2受容体を介して感染するので、新型コロナウイルスが先に感染すれば、他のウイルスがその受容体を占拠するスペースがなくなってしまい、感染が起こりにくいという理屈です。例年、インフルエンザが流行する時期に入る前、日本では約5000万人の人がインフルエンザワクチンを接種します。有効率はコミナティ(新型コロナワクチン)の95%には遠く及びませんが、もし接種がなければ、1000万人/年前後の罹患者数では済まないはずです。昨年1月から、患者だけでなく、医療従事者も発熱には敏感になっています。しかし臨床医は患者を目の前にしてそんなことは言ってられません。冬の乾燥した寒い時期、外来の3分の1が発熱で来るわけで、その中には上気道感染だけでなく、感染性胃腸炎、尿路感染症、髄膜脳炎、白血病など臨床像は多彩です。しかし、1月、2月はインフルエンザの患者が圧倒的に多く、インフルエンザの抗原検査はこの時期、1日20人を超えることもあります。インフルエンザは例年であれば4月終わり頃まで流行しますので、シーズンの検査数が1000人を超えることもありました。しかし、今年はインフルエンザの抗原検査をほとんどしていません。当院でPCR検査をしていることもありますが、発熱した患者はまずPCR検査を希望します。自分で希望する人が半分、それ以外は会社から促されてきた人です。明らかに感染性胃腸炎と思われる症状でも、会社はPCR検査を指定してきます。しかし、これで陽性に出るところが、PCR検査の怖いところです。新型コロナウイルスの入り口は咽頭、気道粘膜です。いきなり、嘔吐・下痢症状で発症することはありません。しかし、患者さんは納得しません。発熱したらまず新型コロナウイルス感染症を疑います。これは、政府、自治体、専門家、メディアによる洗脳です。感染症診療の本来の姿は、臨床医が症状を見て初めて診断、治療が可能となります。私が研修医の頃、本を開いて症状に合う鑑別診断を調べていたら、答えは患者のベッドサイドにしかないと、よく指導医に叱られました。政府は、オンライン診療を推進し、医療費を削減しようとしていますが、私にオンライン診療は不可能です。触診も聴診もしないで、問診だけで肺炎や髄膜脳炎、白血病は診断できません。昨年10月からこれまで、私がしたインフルエンザの抗原検査は10人足らずです。また、発熱した人すべてにPCRをするわけではありません。腰痛、背部痛があって、尿潜血が(3+)であれば、急性腎盂腎炎を疑います。腹痛を伴う嘔吐・下痢があって、腹部X線撮影でお椀を伏せたようなガス像(二ボー)が連なって認められれば、感染性胃腸炎を疑います。湿性咳嗽が数日続き、熱がだんだん上がってくれば、肺炎を疑って胸部X線撮影を行います。本日まで162人のPCR検査をしましたが、陽性者は9人、そのうち肺炎は2人です。もともと新型コロナウイルスの増殖速度は遅く、インフルエンザの1万分の1です。どちらも抗原検査を行えばインフルエンザが先に検出されるはずです。また、新型コロナウイルスを検出するPCRの感度は抗原検査の約1万倍です。冬場、インフルエンザが少なかったのは、専門家のいう「ウイルス干渉」ではなく、ただ単にインフルエンザの抗原検査をおこなっていなかったからだと、私は思います。


2021.5.27. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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