|| HOME || 診療のご案内 || ドクタープロフィール || 人間ドック・脳ドッグ || アレルギー専門外来 || ペインクリニック ||

|| 東京保険医新聞より || ドクターコラム || アレルギーQ&A || 新型コロナウイルス || お知らせ || 地図 || Link ||

新型コロナウイルス その92 LNP


 ゲノム編集は、目的のゲノム領域の塩基配列を任意に改変可能なバイオテクノロジーです。特に2020年、ノーベル化学賞に輝いた第3世代のゲノム編集技術CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)-Cas9システムは効率的で簡便なデザインであるため、様々な難治性疾患、特にがんの根本治療に応用が期待されています。このシステムはCasタンパク質とguideRNAとの複合体(ribonucleoprotein:RNP)として機能します。このシステムへの応用には、これらの因子を効率的に標準細胞に送達可能な技術の開発が重要です。非ウイルスベクターによる送達様式としては、主にプラスミドDNAあるいはRNAとして送達する手法がありますが、前者はプラスミドDNAのゲノムDNAへの挿入リスク及びエンドヌクレアーゼであるCasタンパク質が比較的長期にわたって発現することによる非特異的DNA切断リスクがあり、DNAを核にまで送達するハードルが高く、現在RNAを使った方法が標準で最も開発が進んでいます。ここで登場するのがLNPです。LNPとは脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle)の略で、脂質で構成されるナノ粒子のことです。これは新しい医薬品送達システム(ナノ粒子ドラッグデリバリ―システム;DDS)で、新しい医薬製剤です。2000年代初頭から主にがんの治療を目的に開発されてきました。2020年1月8日、東京医科歯科大学はがん抑制型ヒトマイクロRNA(miR)であるmiR-634をlipid nanoparticle(LNP)に内包した「miR-634-LNP製剤」を開発し、膵臓がんのマウスで全身投与による顕著ながん抑制効果を確認したと、科学雑誌「Moleculer Therapy-Nucleic Acids」に掲載されました。個体ナノ粒子は球形で、平均直径は10〜1000ナノメートルで、親油性の分子を可溶化できる個体脂質コアマトリックスを持っています。投与経路により、異なる界面活性剤(乳化剤)が必要になります。ドラッグデリバリ―(DDS)単体としてのLNPは2018年にsiRNA製剤オンパットロ(英)で初めて承認されました。LNPが広く知られるようになったのは2020年後半、COVID-19の中にmRNA鎖をPEG化した脂質ナノ粒子に封入して送達手段にしてからです。mRNAで使われるLNPは4種類の脂質でできており、イオン化可能性なカチオン性脂質、PEG化された脂質、リン脂質、コレステロールが含まれています。2020年の上原記念生命科学財団研究報告集;34によれば、北海道大学 大学院薬学研究室の研究では、長鎖一本鎖RNAであるmRNAに適した製剤処方が十分把握されているとは言い難いのが現状であるため、LNPによる肝臓と脾臓へのmRNA送達によるゲノム編集設計の最適化とパラメーターを、マウスを使って実験しています。LNPを静脈内注射した後、24時間後に肝臓と脾臓を取り出し、測定タンパク質の濃度を、BCA法を使って定量しています。結果・考察としては製剤処方の送達効率、最適化は、特にその粒子径に大きく依存していることを突き止めました。この時、問題となったのは従来の解析では検出できない遺伝子発現が肝臓や脾臓に起こっていたことでした。このため一つの従属因子に対する複数の独立因子の影響を解析することも必要になってくると結論づけています。厚生労働省 「コミナティ筋注 ファイザー株式会社 特例承認に係る報告書」では、ワクチン開発の経緯や製造工程、安全性評価について、多くの部分が黒塗りになっていてよくわかりません。公にできない部分があるのでしょう。ただ、ラットの実験で、LNPは投与8〜48時間後に、肝臓や脾臓だけではなく、副腎や卵巣にも蓄積することがこの報告書には記載されています。まだ、動物実験でも警鐘が鳴らされているDDSを全世界で行っているのですから、今後なにが起こるかわかりません、といったところが正直な印象です。


2021.6.27. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

|| HOME || 診療のご案内 || ドクタープロフィール || 人間ドック・脳ドッグ || アレルギー専門外来 || ペインクリニック ||

|| 東京保険医新聞より || ドクターコラム || アレルギーQ&A || 新型コロナウイルス || お知らせ || 地図 || Link ||

Copyright (C) HIKAWADAINAIKA CLINIC