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ロタウイルスからこどもを守れ


.殺人ウイルスといわれているものにはアフリカのラッサ熱、エボラ出血熱、アジアのSARS、米国のハンタウイルスなどがあげられる。ところがそういったウイルスよりも「ロタウイルス」の方がはるかに多くの命をうばっている。症状は下痢、嘔吐で、治療せずに放置していると脱水症状を引き起こして死に至ることもある。世界中で、ロタウイルスは毎年約60万人の子供の命を奪っている。5歳未満の死因の約5%はこのウイルスが原因だ。
 ロタウイルスがヒトに下痢症をもたらす病原体であることが突き止められたのは1973年のことである。発見したのはオーストラリアのメルボルンにある王立小児病院の微生物学者ビショップだ。下痢症は子供たちによく見られる病気だが、時々重症になる。そこで手がかりをもとめて、重症の子供の小腸や十二指腸の生検をおこなった。電子顕微鏡で調べて驚愕した。腸の内壁を覆っている上皮細胞の中に車輪状のウイルスが一面に広がっていたのだ。「ロタ」はラテン語で車輪の意味。
 コレラ菌、サルモネラ、赤痢菌に大腸菌など下痢をおこす菌は多い。しかし世界中で見られる子供の下痢のトップはロタウイルスがぬきんでてトップである。生後3ヶ月から5歳までにほぼすべての子供がロタウイルスに感染する。下痢症で入院する5歳未満の子供の25〜40%がロタウイルス下痢症であることがわかった。
 汚染された食物や水を介して広がる細菌の場合は貧しい地域に患者がかたよることが多い。しかし、ロタウイルスに地理的境界はない。この病原体は広くどこにでも見られ、米国人もバングラデッシュの人々と同じ感染リスクにさらされている。風邪のウイルスと同じように簡単に広がるのだ。そして風邪ウイルスがそうであるように、衛生状態を改善したり、飲料水をきれいにしても感染防止にはあまり役立たない。わずか10個のウイルス粒子が体に入っただけで、幼児は下痢を起こす事がある。ウイルスがたくさん含まれる液がたった1滴、赤ん坊の親指やおもちゃにつくだけでいい。それが口に入れば、ウイルスは小腸の内面を覆っている上皮細胞にたどりつき、ものすごいスピードで増殖を始める。24時間以内に10個のウイルスは数百万個にも増える。上皮細胞は死滅し剥がれ落ち、大量の体液や電解質が激しい下痢となって体外に排出される。その脱水症状を治療せずに放置すれば、子供の体から10%もの水分が失われ、ほんの1日か2日の間にショック状態に陥ることもある。
 このウイルスの多くの秘密が解明されてきた。子供を救う有効な予防手段はワクチンしかないことがわかってきた。今日、さまざまな混乱や失敗を経て、ワクチン開発レースにようやくゴールが見えてきた。現在、数種類のロタウイルスワクチンの安全性と有効性が証明されている。近いうちに、ワクチンによってほとんど姿を消したポリオや天然痘、そしてジフテリアなどの病原体の仲間入りをすることだろう。


2006.5.30. ROGER I. GLASS SCIENTIFIC AMERICAN APRIL 2006 より

 

 

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