エピペン
1昭和59年から平成10年までの15年間、
主に林業による蜂刺され事故で549人の死亡が確認されています。いわゆるアナフィラキシーショックです。昭和62年にも当時国有林で作業中の3人がアシナガバチ、スズメバチに刺されてなくなりました。この直後林野庁は救急医薬品、防護服など支給し、1年後に予防と治療のための出版物を発行しました。しかし、ほとんど効果があがりませんでした。平成7年に蜂災害防止対策検討会が設立され、検討の結果アメリカ製エピネフリン自己注射製剤エピペンの携帯が最善の方法であるとの結論に達し1995年から導入が開始されました。厚生省との折衝では国内はじめての使用ということであり、「治験に準じた扱い」となりました。その後8年間の追跡調査で15例の使用例があり、死亡は1例のみという結果でした。この絶大な効果により2003年8月から正式に認可がおり一般開業医でも処方できるようになりました。
2005年4月からは適応が広がり、食物、薬物アレルギーによるアナフィラキシー、また15kg以上の小児にも使用できるようになりました。
エピペン開発はもう30年も前にさかのぼります。やはり蜂毒アナフィラキシーの多いアメリカで1978年、NIH(National Institute of Health:国立衛生研究所)による専門家会議が開催されたのが発端です。また米国では毎年3000人が食物誘発アナフィラキシーで医療機関に救急搬送され、そのうち約200人がなくなっている、などが背景にあります。
アナフィラキシーをおこすと、末梢血管の拡張 血管透過性亢進、冠動脈収縮(心筋虚血),上気道浮腫、気管支痙攣などの症状をひきおこし、わずか5分から10分で血圧低下、ショックなどの重篤症状に移行します。これらすべてに有効な薬剤がエピネフリンで、重篤症例では数分おきにこれを筋注もしくは静注します。アメリカで2000年、日本では2004年に日本化学療法学会でアナフィラキシー治療ガイドラインが作成されました。これによるとアナフィラキシーの軽度症状からエピペン使用が有効であると記載しています。これは30分までに使用した症例で死亡例がないというアメリカのBarnardらの報告が元になっています。
現在心停止をきたした患者にAED(automatic external defibrilator:全自動体外式除細動器)を施行し救命された例が数多く報告されています。アナフィラキシ−はアレルギー患者の10%が経験し、その5%がショック症状などの重篤症状をひきおこします。日本救急医学会、日本アレルギー学会など関連団体では学校などの公共施設、救急車などでも使用できるように呼びかけています。
現在エピペン処方は保険の適応がなく登録医でないと処方もできなど、複雑なシステムになっています。一般医がいつでも保険で処方できるよう早急に改善する必要があると思います。
2006.6.22. 第5回練馬区病診連携アレルギー懇話会 櫻田 二友
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