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新型コロナウイルス その108 気管支肺胞洗浄液(BALF)


 世界中で発表された新型コロナウイルスに関する論文の数は、今年1月ですでに200万本を超えました。そのもとになった論文が、2020年1月7日に「Nature」誌に掲載された「A new coronavirus associated with human respiratory disease in China」です。序章では、重篤な急性呼吸器症候群(SARS)やジカウイルス病などの新興感染症は、公衆衛生に大きな脅威を与える。新しい病気がいつ、どこで現れるかは不確実です。最近、中国湖北省武漢市で重篤な呼吸器疾患が報告された。2020年1月25日現在、2019年12月12日に最初の患者が入院して以来、1,975例が報告されている。武漢のシーフード市場で働いていた基礎疾患のない41歳の男性が12月26日武漢中央病院に入院した。
1週間続く発熱、胸痛、咳、めまいなどがあり、SpO2(動脈血酸素飽和度)は67mmHgまで低下していた。CRP(炎症を示すたんぱく質)は41.4mg/dlまで上昇していた。白血球、血小板は正常だった。胸部X線撮影で両側にすりガラス状の陰影があり、すぐに抗生物質、抗ウイルス剤、ステロイドの投与が行われた。生化学的検査や抗原検査でインフルエンザやマイコプラズマ、アデノウイルス等の感染症などが否定されたため「気管支肺胞洗浄(BALF)」が施行された。BALFとは診断がつかず、肺の両側に、びまん性の肺疾患(特発性間質性肺炎、過敏性肺臓炎、薬剤性肺炎、膠原病性肺炎、好酸球性肺炎、サルコイドーシス、じん肺等)がある時に行うもので、その工程は詳細に記載される必要があります。あらかじめ胸部X線やCTで選択しておいた検査に適切な気管支(主に中間気管支幹)に、気管支鏡を通して50mlの生理食塩水をゆっくり注入します。その時ゆっくり大きな息を吸ってもらって注入します。気管支鏡の細い管を通して軽い陰圧をかけて、注入した液を回収します。これを4回繰り返します。この時、回収率をチェックします。97〜98%の回収率があった検体だけが検査の対象になります。洗浄液を遠心分離器にかけて上澄み液、血漿成分を除きます。下にたまった血球成分のうち赤血球は一番重いのですくに分離できます。好塩基球や好酸球は数時間で死滅するため、すぐに培養液に浸します。細胞が生きている間に数時間で細胞表面上の補体、ケモカイン、サイトカイン、接着因子などの検査を行い、病気の診断に使います。論文は24ページにわたりますが、3ページ目には、この全く分離もしていないただの肺胞洗浄液200μlを使って、RT‐PCR法(次世代シーケンス法)によりDNAを決定しています。これがSARS‐CoVと約77.2%のアミノ酸相同性があると記載されています。簡単にいえば、ウイルスの同定はできなかったが、SARS‐CoVと似たウイルスに違いないということです。研究論文は詳細にその過程を掲載しなければなりません。肺胞洗浄液の取り出し方、どこの気管支に何mlの生理食塩水を入れたか、回収率はどのくらいか、どの細胞を使って検査したか、などの記載が全くありません。ただ肺胞洗浄液といってもプラごみといっしょでいろんなものが混ざっています。これを遺伝子解析しても何の意味もありません。この論文がもとで世界中が大騒ぎをしています。遺伝子配列がいい加減な新型コロナウイルスですから、PCRの特異度が99%ということを考えれば、Ct値を50回にすればすべてが陽性になってしまいます。7月に入ってからの陽性率は当院で80〜90%ですのでCt値は40〜45回と推定されます。もともといい加減な論文をもとにパンデミックは発生しています。200万本を超える論文に、このことを指摘する論文は見当たりません。患者は入院後6日目には別の病院に転院になって、転帰(軽快または死亡)の記載がありません。その1週間後には論文が受理されています。臨床研究論文としてはとても奇妙です。

 


2022.8.4. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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