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新型インフルエンザ その2


最近新型インフルエンザが従来の季節性インフルエンザと少し違うのではないかという認識が広まってきています。喘息や糖尿病、妊娠といったインフルエンザを重症化させるリスク要因のない死亡例が相次いで報告されているからです。季節性インフルエンザでも肺炎をおこして死亡することはあります。しかし季節性インフルエンザで肺炎になるのはほとんどが高齢者か免疫不全の患者です。一方、新型インフルエンザは子供から中年に至る幅広い世代の健康な人々にも重い肺炎を起こしています。最近の研究で従来の季節性インフルエンザとの違いが明らかになってきました。今年8月20日に発表された英科学誌Natureに東京大学医科学研究所の河岡義裕先生が次のような実験結果を発表しています。まずカリフォルニアの患者から分離された新型インフルエンザウイルスと、今年の冬に分離された季節性インフルエンザ(ソ連風邪)のウイルスをそれぞれ成長期のマウスの鼻に垂らして2週間観察しました。ウイルスの数が103個以下では両者に大きな差は見られなかったが104個以上では、新型ウイルスに感染させたマウスはあきらかに体重が減少し106個以上では回復せず死亡した。しかし季節性ウイルスに感染させたマウスは最初少し体重が減ったものの、その後回復し順調に体重が増えた。感染後3日目に、マウスの体の各部のウイルス量を調べた。鼻では新型ウイルスも季節性ウイルスもほぼ同程度に増えていたが、肺では新型ウイルスの方がよく増殖していた。6日目も同様で、新型ウイルスを感染させたマウスは気管支炎や肺炎を起こしていた。同様の実験結果をカニクイザルやフェレットで得ています。
新型インフルエンザは変異したばかりの100%豚由来のインフルエンザで鼻の粘膜より豚の体温に近い人間の肺の方が増殖しやすいのです。現在市販されている抗ウイルス薬のタミフルやリレンザは発症直後に投与すれば肺でのウイルス量を1/10に減らすことができます。これは大変重要なことで、この程度減れば、健康な人ならば自分の免疫でウイルスを抑え込むことができるのです。逆にいえば初期投与を逃すと自分の免疫で抑え込むことができなくなるのです。死亡者の中に発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬を投与されて亡くなった人がいないのはこういう理由があるのです。
 最後にインフルエンザ簡易検査についてです。横浜衛生研究所の調査で、ウイルスの遺伝子検査で新型への感染が確定した人の約8割が簡易検査でも陽性でした。しかしそのうち約半数では初日に簡易検査が陰性だったそうです。検査だけではなく臨床症状や周囲の環境、刻々と変わっていくインフルエンザの性質を注意してみていく必要があるのです。
また新しい情報があれば報告します。

2009.11.1. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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