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キース・ジャレット


 もう35年も前のことである。大学受験に失敗した私は大阪なんばの地下街をただぶらぶら歩いていた。夕方の6時頃だった。ふとコンサートの壁紙が目にとまった。ジャズピアノの演奏会らしい。少しチケットは高かったが入ってみることにした。客席もぱらぱらで、前のほうはほとんど空いていた。私は一番前にすわってかぶりつきで聴く事にした。演奏開始のブザーがなった。左の袖口からピアニストがはいってきたが、その姿に唖然としてしまった。ピアニストらしくないのである。背は高いがやせっぽちで色黒、ジーパンやズックはよれよれ、泥がついてあちこちやぶれている。何年も着ているような汚いシャツ。頭はまるで大きなマリモ状態。演奏が始まって私はまた衝撃を受けた。体を左右にゆすり奇声をあげる、立ったり座ったり、時には弦をはじいたり。リズムも和声も私にはいいかげんに聴こえた。私はそのころ作曲家になりたかった。ベートーベンが大好きで交響曲などの楽譜はほとんどそらんじるほどであった。楽譜をみながら間違えなく弾くことにずっと幼いころから慣れ親しんでいた。まさに青天の霹靂であった。これがはじめてのキース・ジャレットとの出会いである。今では不ぞろいなリズムや不協和音が自然に身に付いてしまった。もう元にもどれない。ピアノが私にとってはいつまでもあきないゲーム機になった。私の診察室では朝から晩まで静かな不協和音がバックにながれている。

2010.6.23.氷川台内科クリニック 院長 櫻田 ニ友
東京保険医新聞 2010年8月5・15日合併号より

 

 

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