肺炎
今日は肺炎についてお話します。肺炎は肺実質、肺胞気腔にウイルスや細菌が増殖し炎症を起こす病気です。発熱、湿性咳嗽、呼吸困難など急性の呼吸器症状で発症しますが、中には腹痛、背部痛で発症する人もいます。これが最近にわかに脚光を浴びてきました。日本人の死亡原因は長い間、1位「がん」、2位 「虚血性心疾患」、3位「脳卒中」でした。ところが、2011年に行われた人口動態統計(厚生労働省)で「肺炎」が「脳卒中」にかわって第3位になりました。肺炎の死亡例の約97%を65歳以上の高齢者が占めています。2020年には、後期高齢者が人口の約20%を占めると推測されています。超高齢化社会を迎えるにあたって対策が必要になってきています。
市中肺炎で最も多いのが肺炎球菌性肺炎で、施設のデータにもよりますがおよそ30%を占めます。次がインフルエンザ肺炎、マイコプラズマ肺炎と続きます。
肺炎は風邪やインフルエンザと同様に冬季に多い疾患で、風邪ウイルスやインフルエンザウイルスとの混合感染は40%に上ります。このため、冬季に風邪やインフルエンザに罹らずに過ごすことが大変大事です。これにはワクチンが有効です。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを同時接種したことにより50%以上死亡率が低下したと報告されております。肺炎球菌ワクチンは、23価の肺炎球菌莢膜多糖体ワクチンです。このワクチン接種により肺炎球菌の感染を予防し、肺炎の重症化を防ぐことができます。安全性が高く、免疫も5年以上持続します。
インフルエンザワクチンはすでに65歳以上の高齢者やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や糖尿病、心不全など慢性の基礎疾患のある人を対象に公費助成制度が導入されています。肺炎球菌ワクチンも全国の半数の自治体で公費助成が受けられるようになっています。現在、65歳以上の肺炎球菌ワクチンの接種率は20%程度で、今後さらなる普及が望まれます。
肺炎の診断はなかなか厄介です。重い風邪症状(発熱、咳、鼻汁、咽頭痛)などあれば疑うこともできますが、高齢者では食欲がないなど、ほとんど症状がない場合もあります。いつもと様子が違うと感じたらすぐに医療機関に受診することが肝要です。本人も周囲も気づかずに、患者さん自身が保菌者となって周囲に感染を広げる場合もあります。介護施設や先日の東日本大震災後の被災地でも問題になりました。
肺炎球菌ワクチンの具体的な接種方法は以下の通りです。これから冬季に向けてインフルエンザが流行ってきます。インフルエンザワクチンは流行の1か月前、11月から12月中に接種します。肺炎球菌ワクチンは季節を問わず接種可能ですが、インフルエンザワクチンの接種にあわせて反対側の腕に接種します。
2013.10.07. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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