舌下免疫(減感作)療法
先日、日本アレルギー学会がホテル・ニューオータニでありました。そこでの話題を報告します。日本人の1/4から1/3が罹患していると思われるアレルギー性鼻炎(花粉症を含む)。現在唯一の根治療法である皮下免疫療法(減感作療法)に新たなツールが加わります。現在皮下に注射している抗原エキスを舌下にたらし2分後に飲み込む方法です。現在まで全国のアレルギー専門施設で約1000人に治験が行われました。来年4月頃から保険収載され実施の予定です。この最大の利点は2つあります。1つは皮下減感作療法のように病院に注射に通わなくてすむ点です。もう1つはアナフィラキシーなどの全身反応の副作用頻度が少ないという点です。皮下免疫療法が800回に1回の頻度に対し舌下免疫療法は1億回に1回という少なさです。ヨーロッパでは舌下免疫療法が1980年代から行われておりますが、致死的な報告例は1例もありません。局所反応も少なく口腔内のかゆみ、口唇の腫脹、咽頭刺激感などの出現頻度は0.068%と報告されています。方法は、まず病院で初回投与を行い2週間自宅で毎日少しずつ増量します。増量期終了後、1日1mlの舌下投与を約2年間毎日継続します。ただ唯一の難点はこの毎日つづけるということです。1年後まで毎日続けられた人は実は38%しかいませんでした。免疫療法は維持期(免疫療法を受けている期間)が長ければ長いほどその後の効果が持続するといわれています。したがって実施にあたっては確実に2年から3年間毎日継続の意思のある人に限られます。それでは、現在皮下免疫療法(減感作療法)を受けている人が舌下に変えることができるかどうかです。それは可能です。上に示した方法を最初から行います。現在皮下免疫療法を行っている人で維持期の人(月に1度受診し減感作を行う)がわざわざ最初から舌下免疫療法をする必要はありません。皮下とどちらが有効かという質問も出そうですが、若干皮下のほうが有効という結果でした。いずれにしても自宅でできるという利点と全身反応が少ないといった点で今後アレルギー治療の主流になっていくのではないかと考えられています。以下が適応です。当初原則は12歳以上となっています。これはやはり、ある程度副作用等について自分で認識できること、自分で長期間継続できる最低年齢だと考えられます。もう一つは特異的IgEが病態に関与していることが条件です。症状だけで判断はできないということです。症状が軽症か重症かは問いません。病院には月に1度受診する必要があります(最初の1年は2週間に1度)。来年始まる予定の抗原エキスはスギ花粉症のみが対象です。徐々に抗原エキスは増えていく予定です。薬価は未定です。皮下に使うものとまったく同じものを使いますので少し高価にはなります。アレルギー治療は新たな段階に入った感があります。ご質問についてはまた当院ホームページ・アレルギーQ&Aでお答えします。
2013.12.04. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
|