頻尿
今日は頻尿についてお話したいと思います。頻尿とは文字通り排尿回数が多いことで、昼間頻尿と夜間頻尿があります。昼間頻尿は1日8回以上トイレにいく、夜間頻尿は排尿のため1回以上おきなければならない状態と定義されています。病態は機能的膀胱容量の減少(1回排尿量が200ml以下)か多尿です。機能的膀胱容量の減少は膀胱蓄尿障害で生じ、代表的疾患が過活動膀胱です。また排尿障害のために多量の残尿があると機能的膀胱容量が減少します。一方、多尿は24時間尿量が40ml/kg体重以上と定義されます。夜間多尿は24時間尿量に対する夜間尿量の比が高齢者では0.33以上(若年者では0.20以上)と定義されます。
以上が診断に必要なことですが、漠然としてよくわかりません。それで排尿日誌をつけます。1)昼間・夜間の排尿回数 2)1日の排尿量 3)夜間尿量 4)24時間の排尿時刻などを数日つけます。これで、おおよその診断がつきます。 基礎疾患に糖尿病、高血圧、高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病、睡眠障害がないかどうか、また水分、アルコール、カフェインなどの摂取なども関係します。
病院でまず行うことは尿沈渣(尿検査)です。頻尿の期間が1週間以内で残尿感、排尿時痛、血尿、蛋白尿などがあれば膀胱炎、男性は急性前立腺炎などが疑われます。これらの疾患は抗生剤を使って数日でおさまります。おさまらない場合、また症状が長期にわたる場合は膀胱容量が減少する原因として、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱上皮内癌、膀胱結石などが考えられます。残尿量増加を伴えば尿道狭窄や前立腺肥大を疑います。
以上のことをふまえて治療を行います。過活動膀胱などの膀胱蓄尿障害にはα1ブロッカーを使います。1〜3か月使って様子見ます。これで改善のない場合は抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体刺激薬などを注意しながら使います。
次は多尿についてです。最近メディアで水分を十分に取れば脳卒中や心筋梗塞になりにくいと盛んに報道されています。なかには1日中ペットボトルを持って歩いている人がいます。夏の暑い時期に脱水になるのはよくないですが、過剰な水分は尿量が増加するだけで血液がサラサラになる効果はありません。多尿でQOLが下がるだけです。水分の取りすぎに注意します。糖尿病の人はもともと口渇感があるため、多尿になりやすい傾向にあります。多尿を治すのではなく、糖尿病の管理をしっかり行うことが大切です。
膀胱容量と尿量には日内変動があり、膀胱容量はもともと夜間睡眠中のほうが大きく、尿量は夜間のほうが少ないのが普通です。このバランスが崩れると夜間頻尿になります。この代表が睡眠障害です。その他夜間多尿の原因としては、心機能の低下、下肢の循環不全による日中水分貯留、睡眠時無呼吸症候群、抗利尿ホルモン分泌の異常などが考えられます。
頻尿とともに肉眼的に血尿がある場合は要注意です。中高年者は膀胱癌や前立腺癌、腎盂癌などの悪性腫瘍も鑑別する必要があります。
2016.9.10. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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