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大腸がん


 今日は大腸がんについてお話したいと思います。今年8月国立がん研究センター(東京・中央区)が全国409のがん診療連携拠点病院の診療実績(2013年)の集計を行いました。
本邦の全がん症例のおよそ7割にあたると考えられます。それによると男性では大腸がんの症例が胃がんを抜いて2007年の集計以来最多となりました。全62万9591例のうち、大腸がんが9万1530例、胃がんが7万5265例、肺がんが7万3017例となっています。大腸がんの症例が増えた要因としては食生活の変化が大きいと考えられます。野菜や穀類の摂取が減り、肉類(赤み肉、ハムなどの加工肉)が増えたことです。ハワイに移住した日系人に大腸がんが多いのは有名な話です。また飲酒、喫煙、肥満、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病もリスクを高めます。早期に発見すればほぼ大半は完治しますが、自覚症状がないのも問題です。本邦では大腸がんのスクリーニングに便潜血検査を行っていますが、便潜血陽性で大腸内視鏡検査を受ける人は40%に満たないのが現状です。痔のせいだと放置して進行してしまう人もいます。自覚症状としては血便、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、残便感、腹痛、貧血、体重減少などがあります。しかし、これは進行した場合が多く、早期で発見するにはまず便潜血検査が必要です。この検査を毎年受けていれば大腸がんの見落としはまずありません。練馬区に限って言えば、昨年便潜血検査を受けた人は対象者約32万人のうちおよそ2割、64647人でした。便潜血が陽性で要精検になった人は約8.0%でした。このうち大腸内視鏡検査を受けた人は67%です。全国平均からすると高いですが、まずは早期発見のための便潜血検査の受診者を増やすことが重要と考えられます。よくある質問で、便潜血が陽性の場合もう一度検査してほしい、あるいは翌年便潜血が陰性の場合があります。大腸がんはゆっくり進行するのでこういうことは時に起こりえます。もう一度検査して陰性だからといって大腸がんを否定することはできません。また大腸内視鏡検査をしたくないので腫瘍マーカーを調べてほしい、と言ってこられる患者さんがいます。確かにCEAは大腸がんの手術後に定期的に測定すれば再発を早期に発見し、生存率も向上したという報告があります。しかし、問題は腫瘍マーカーを調べても、がんがないのに異常となる「偽陽性」が多いことです。たとえば喫煙だけでもCEAは上昇します。したがって、これも大腸がんの早期発見にはつながりません。もう一つ、便潜血検査で必ず大腸がんが発見できるかという問題があります。発見できない「偽陰性」が1000人に1人か2人います。しかし、このためにすべての人に大腸内視鏡検査をするのはマンパワーからして不可能です。大腸がんを防ぐにはやはり便潜血検査を毎年受ける、そして、便潜血が陽性であれば大腸内視鏡検査を受けるというのが正解です。これをすべての自治体で完全に行うことができれば、大腸がんはほぼ無くなるということになります。次回は大腸内視鏡検査についてお話します。


2016.12.7. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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