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制御性T細胞(Tレグ)


 最近、ピーナッツアレルギーや乳製品のアレルギー、卵アレルギーなど、食物アレルギーについて、メディアでたくさん報道されています。これについて説明したいと思います。通常、人は何の違和感もなく食物を食べています。お米、味噌、梅干し、納豆、ラーメン、カレーライス、蕎麦、果物、魚、肉、野菜などなど、当たり前のように食べています。
 実はこれは、本当は当たり前ではないのです。人は異物である細菌やウイルスが体内に入ってくると、攻撃しようとします。いわゆる免疫(抗体)が働いて、細菌やウイルスを除外しようとします。このためIL−2などのサイトカインが産生され熱が出ます。
 癌細胞は毎日体内で作られています。しかし、これらの癌細胞もリンパ球が攻撃して増殖しないようにしています。このため、人は毎日、安心して暮らしていけるのです。
 食物も異物です。では、異物である食物に対して人は何で攻撃を仕掛けないのでしょうか。実は、当然異物ですので、免疫細胞は攻撃を仕掛けているのです。
 攻撃を仕掛けるには、胸腺という臓器からT細胞が産生されます。ところがこのT細胞には、攻撃する細胞と制御する細胞(制御性T細胞=Tレグ)があることがわかりました。
この制御性T細胞はすべての食べ物に対して、T細胞が攻撃するのを防ぎます。これが、もともと体内に備わっているというから驚きです。この制御性T細胞のおかげで、人は安心して何の違和感もなく美味しい食物を摂取することができるのです。
 では、ピーナツアレルギ―、乳製品のアレルギ―、卵アレルギ―はどうして起きるのでしょうか。これは、この制御性T細胞の制御が効かなくなったせいで起ります。この原因は小さいときの乳児湿疹に関係します。
 赤ん坊はソファーやベッドの上で、お母さんのまわりをハイハイします。そこにはスナック菓子の屑がたくさん落ちています。乳児湿疹があると、そこからピ-ナツ蛋白質や乳製品の蛋白質が入りやすくなります。そこで経皮感作を受けるのです。
 攻撃性T細胞と制御性T細胞は微妙なバランスの上に成り立っています。なおかつ、その遺伝情報は同じたんぱく質の上にあることも分かっています。このバランスは乳児期のこういった生活環境で崩れてしまいます。
 しかし、このまま、この子供たちはこの食物アレルギーを持ち続けるかというと、そうではありません。約90%が青年期になるまでに改善していきます。
 では改善しない子供たちがいるのはどうしてでしょうか。それは、お母さんが厳格な食事制限をするためです。いい加減な食事制限をしていれば、食物アレルギーは完治して行きます。これは、少しずつアレルギー食品を取ってしまったために、免疫寛容状態ができ完治に至ったものと考えられます。これは、アレルゲン免疫療法の本質でもあります。


2017.5.9. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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