心房細動(AF)
今日は最近増えてきた心房細動についてお話します。心房細動はもっとも頻度の高い不整脈で全人口の1〜2%と想定されます。日本人の寿命は2015年厚生労働省の発表では、男性が80.79歳、女性が87.05歳でした。高齢化に伴ってますます増えてきています。80歳以上では10%を超える人が心房細動を持っています。心臓弁膜症、高血圧、心筋症、虚血性心疾患、甲状腺機能亢進症などを合併すれば罹患率は30%以上に上ると推定されています。
心房細動の原因はよくわかっていません。私たちの心臓は1分間に60〜70回、一定のリズムで収縮を繰り返し、全身に血液を送り出しています。ところが、何らかの原因で1分間に300回〜400回という非常に速い頻度で心臓が震え、収縮力が弱まることがあります。これが、心房細動です。時には心房は一時停止状態となります。このことによって、心臓の中の血流速度が遅くなり、血液が溜まり、血の塊=血栓が心房にできやすくなります。
できてしまった血栓は何らかの拍子で剥がれ落ち、血液にのって頭に運ばれ、脳の血管を詰まらせてしまいます。この心房細動が原因で起こる脳梗塞を「心源性脳塞栓症」と言います。詰まる場所によって症状は異なりますが、中大脳動脈の根幹に詰まれば、反対側の四肢は完全麻痺状態になります。
心房細動の約半数は自覚がありません。突然、脳梗塞、半身麻痺になり、はじめて発見されることもまれではありません。そのため、健診が重要になります。心電図で、1.不規則な基線の動揺=f波の存在。2.P波が認められない。3.R−R間隔がすべて不整、
で確定診断ができます。
治療は外科的治療と内科的治療に分かれます。外科的治療では、原因となる肺静脈・上大静脈のトリガー隔離のためレーザーや温熱で焼却する方法があります。これは、日本循環器学会が2012年に「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」をだして、クラスTからIIIにわけ、適応となるかどうかを術前に精査することになっています。
内科的には、現在は抗凝固療法が主流になっています。なんといっても心房細動の治療で最優先は脳梗塞の予防です。このため血をサラサラにして血栓をできにくくしておくことが大切です。以前はPT―INRを毎月病院で測定しながら、ワーファリンを1日3〜4錠飲む方法が主流でした。これは納豆を食べることもできず、長年にわたって使う薬としては患者さんにとって苦痛でした。しかし、現在は抗凝固薬が登場し、そんな心配もありません。毎日飲み続けるだけでいいのです。これで、6割の脳梗塞は防ぐことができます。
ただ、抗凝固薬は血栓ができないように血液を固まりにくくする薬です。高齢になると転倒や打撲はいつでも起こりえます。特に頭部打撲は脳出血の原因になり注意が必要です。
2017.5.13. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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