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新型コロナウイルス その4 結核


 WHO(世界保健機関)によると結核はエイズの次に多い感染症で、世界の人口の約3分の1が結核菌に感染していると考えられています。エイズ患者も約4人に1人が結核で亡くなっています。結核による死者の95%は中低所得国で、2017年には1000万人が結核に罹患し160万人が死亡したと推定されています。日本では2000年代に入っても毎年2万人が発症し、約2000人が死亡しています。WHOによると「結核中蔓延国」に該当します。
世界地図で、今回の新型コロナウイルスで重症化し肺炎で死亡した人が多い国々と結核菌に感染している国々を比べてみると、きれいな逆相関図が認められます。アジア・アフリカ諸国では80%が結核に罹患しています。それに比べて、アメリカの結核罹患率は5%にすぎません。毎年2万人が結核に罹患しますが、その半分が移民です。ヨーロッパ諸国も同様で、結核は過去の病気と考えられています。これは、各国のBCGワクチン接種率を見れば一目瞭然です。スペインでは1981年、その他のヨーロッパ諸国でも2000年代初頭までにBCGワクチンの摂取義務はなくなりました。唯一ポルトガル、トルコ、イラクのみが現在でもBCGワクチンを接種しています。新型コロナウイルスに罹患し死亡した人はイタリア、スペイン、フランス、アメリカではもうすでに1万人を超えています。アジア・アフリカ諸国では、重症化し死亡した人はヨーロッパ諸国に比べればはるかに少ない人数です。これは、明らかにBCGワクチン接種と関係があると言わざるを得ません。
日本では1949年に結核予防接種が法制化され、30歳未満の人に毎年ツベルクリン反応検査を行い、BCGワクチンによる免疫が確認されなかった場合繰り返し接種を行うことになりました。1951年には「結核予防法」ができ、小学校未就学児を対象にBCGワクチン摂取が義務化されました。現在は1歳未満のすべてが接種対象者になっています。その結果日本では結核患者が順調に減少していましたが、1998年頃から再び上昇に転じました。これはツベルクリン反応検査に問題がありました。ツベルクリン反応検査で陽性になった時、本当に結核に感染したためなのかBCGワクチン接種のためなのかわからなかったからです。これは日本呼吸器学会や日本結核病学会でも何度も議論になりました。結核の治療はほぼ確立されていたため、BCGワクチン接種をやめようと言う意見もありました。そこに、2005年、クォンティフェロンTBゴールドが登場しました。これは結核患者から採取された血液に結核菌特異抗原を混ぜて培養し、T細胞から遊離するインターフェロン―γをサンドイッチ免疫酵素法(ELISA)で測定する方法です。2種類の抗原を使いますが、これらの抗原はBCGには存在しないのでBCG接種の影響をうけることなく確実な結核感染診断が可能になります。2007年に結核予防法は廃止され感染症法に統一されましたが、幸い今もBCGワクチン接種は続けられています。新型コロナウイルスで重症化し死亡する人が欧米諸国に比較して極端に少ない原因がBCGワクチン接種にあるのなら、それは日本の感染症対策がこれまで間違っていなかったという証拠になります。


2020.4.8. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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