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新型コロナウイルス その7 PCR検査・治療薬・ワクチン


 今日は新型コロナウイルスの検査、治療薬、ワクチン開発についてお話します。今抗体検査に移行しつつありますが、抗体検査はIgM抗体が平均7日、IgG抗体が平均2週間程度、それ以降抗体が検出されれば既感染者とみなされます。感染したことがあるかどうかには最適の検査と思われますが、現在罹っているかどうかPCR検査に勝る検査はありません。ところで、日本のPCR検査数は他の国と比較すると圧倒的に少ない状況です。4月28日、イタリア、ドイツでは人口10万人あたり3000件、アメリカ、シンガポールでは1700件に対し日本は150件です。これは、最初政府が2月下旬に「限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある人に集中する必要があるため」と宣言したためです。このためPCR検査は地方衛生研究所と保健所が独占して行ってきました。日本には国立大学や民間検査会社に数十万人の検査技師がいます。どうして民間に移行しなかったのか不思議です。政府・専門家会議は遺伝子診断技術の難しさ、陽性患者の爆発的増加などを心配していたのでしょう。私は、遠い昔、研修医の頃よくわからずに研究室でやらされていました。それほど難しい検査ではありません。例えは悪いですが、郵便を日本郵政に独占させて、クロネコヤマトや佐川急便を使わないのと同じです。次は治療薬についてです。もうすぐエボラ治療薬のレムデシビル、抗インフルエンザ薬のアビガンが承認されます。それぞれ、6割から7割の治療効果が期待できると報告されていますが、治療効果が確認できたのは2週間から3週間後です。治療が奏功したのか、通常の感染経過と同じように自然治癒したのかどうかわかりません。肝障害、腎機能障害、催奇形性などの副作用もあります。慎重に経過を検証する必要があり、どちらも決定的と言われる治療薬ではありません。その他にこれまで報告されてきたように、新型コロナウイルスはサイトカインストームという過剰な免疫反応により重篤な多臓器障害やARDS(急性呼吸器切迫症候群)などの重度な呼吸不全を起こすことが知られています。このためサイトカインの一種であるIL−6の働きを抑える抗体医薬やサイトカインによる刺激を伝えるJAC(ヤヌスキナーゼ)を阻害する薬剤等が候補に挙がっています。次はワクチンについてです。ワクチンには大きく分けて2種類のワクチンがあります。ウイルスや細菌を何代にも継代培養させて病原性を弱めたBCG、麻疹、風疹などの「生ワクチン」と、病原性をなくした細菌やウイルスの一部を使ってつくられるインフルエンザなどの「不活化ワクチン」です。しかし、どんなワクチンにも接種する際にADE(Antibody Dependent Enghancement:抗体依存性感染増強)とういう現象が生じる可能性があります。ウイルスに感染しないためのワクチンを接種することで逆にウイルスに感染しやすくなってしまう現象です。詳しいメカニズムはわかっていませんが、これまでエイズウイス、マラリアなどのワクチンがいまだ開発できていないのはそのためです。SARS(重症呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)も同じ理由です。これを防ぐため、大阪大学はプラスミドDNAに新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作りだすような遺伝子を組み込み、体内の免疫システムを利用してウイルスを除去する方法を模索しています。いわゆるDNAワクチンです。年内とされていますが、大いに期待しています。


2020.5.6. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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