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新型コロナウイルス その9 潜伏期間と予後


 コロナウイルスはこれまで7種類が報告されています。SARS(重症急性呼吸器症候群)は2002年11月16日に、中国南部広東省で今回の新型コロナウイルスと同じような非定型性肺炎の患者が報告されたのが発端です。その後インド以東のアジアとカナダを中心に、32の地域と国々に拡大しました。中国では初期に305人の感染者(死亡例5人)が発生し2003年3月初めには旅行者を介してベトナムや香港で院内感染を引き起こしました。WHOは3月15日に全世界にむけて原因不明の重症呼吸器疾患として「世界規模の健康上の脅威」として注意喚起を行いました。2003年12月31日のデータによると、報告症例数は2002年11月〜2003年6月に中国を中心に8096人で、774人が死亡しています。そのうち1707人(21%)が医療従事者でした。台湾で最後の感染者を6月15日に隔離して以降、20日間新たな感染者がなく、WHOは7月5日に終息宣言を出しました。およそ20%が重症化しましたが、SARSの起源、感染経路、病原性、不顕性感染の有無、病態生理、季節性流行の可能性等、不明な点が多い中、SARSはおよそ8か月で終息しました。MERS(中東呼吸器感染症)の発生の発端は、2012年6月13日にサウジアラビアで60歳の男性患者が呼吸困難で入院、2日後の胸部X線撮影で両側肺の浸潤影を認めました。集中治療室で抗菌薬やタミフルなどの投与が行われましたが、膵炎、腎不全を併発し死亡しました。この時遺伝子検査が行われましたが、原因は特定できませんでした。イギリス、ロンドンに住む49歳の男性が、同じ年の7月31日からサウジアラビアに旅行に出かけました。8月14日ごろから鼻水と微熱がありましたが、そのままカタールに移動しました。3日後には症状は回復しています。ラクダやヒツジを飼っている農場に滞在していますが、これらの動物との直接接触はなかったと報告されています。9月3日に中等度の呼吸困難と発熱が認められ入院しましたが、9月12日には人工呼吸器が必要となっています。この日にロンドンに搬送され、9月20日にはECMO(体外式膜型人工肺)が装着されています。まるで今の新型コロナウイルスでよくみられる症例報告を聞いている感じです。発症にいたるまでの潜伏期間や経過、重症化にいたる過程が全く同じです。この2症例から共通の新種のウイルス遺伝子が発見され、HCoV−EMCと名付けられました。その後、中東各国で報告例が相次ぎ、2015年には韓国(感染者数186名、死亡者数36名)、中国に拡大し、2019年11月までに確定患者は2494人、死者858人(致死率34%)にのぼっています。2020年に入ってからもサウジアラビアで19人が感染し8人が死亡しています。感染症には発症前の潜伏期間があります。季節性インフルエンザなどは、1〜3日、麻疹、風疹、コロナウイルスなどは2週間、結核は4〜8週間、エイズは数年〜数十年です。今回の新型コロナウイルスを潜伏期間だけで見れば、今後季節性の感染症になる可能性は少ないと思われます。そして、SARSやMERSのように、ワクチン開発や集団免疫が備わる前に、自然消退していく可能性も考えられます。しかし、消退してもこの世界的パンデミック状態ですので、今後数年数十年にわたって感染はくすぶり続けることでしょう。


2020.5.18. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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