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新型コロナウイルス その20 がん


 日本のがん統計は、罹患データが2〜3年、死亡データが1〜2年遅れて公表されています。昨年末、2019年度のがん罹患予測が発表されました。男性572,600人、女性444,800人、合計1,017,200人です。がん死亡予測は男性222,500人、女性157,800人、合計380,300人です。本邦ではがんで亡くなる人は男性で2人に1人、女性で3人に1人です。自分はかからないと思っている人が大半ですが、私たち医師はいつも身近に必ずがん患者はいますので、自分だけ例外と思うことはありません。柳田邦夫作、「がん回廊の朝」(1981)でがんセンターの総長が肺がんで亡くなる時、自分の弟子たちに何も言わずに、ただ「ありがとう」と言って亡くなっていきました。弟子たちは総長に他人の患者の正常な肺のレントゲン写真をすっと見せていましたが、総長は最初からわかっていました。40年前は、がん、特に肺がんは不治の病で、患者に告知するかどうかは、よく医局で議論になりました。現在の全がんの5年生存率は60%を超えます。早期胃がん、前立腺がん、甲状腺がんなどはほぼ100%に近い値です。全がんの5年生存率を下げているのは、発見が難しい膵臓がんや胆管がんなどがあるからです。日本のがん受診率は先進国でほぼ最下位で肺がん、胃がん、大腸がんで40%台です。アメリカのがん死亡で一番多いのは膵臓がんです。肺がんは胸部CT検査、胃がんは胃内視鏡検査、大腸がんは大腸内視鏡検査を行います。そのため日本で多い肺がん、胃がん、大腸がんで亡くなる人が少なく、日本で一番少ない膵臓がんがアメリカでは最も多いがんとなっています。がんは高齢化で増え続けますが、今や早期発見で9割以上がよくなる病気です。本邦ではまずはがん受診率を上げることが課題です。アメリカのVanderbilt University Medical Centerは、約30か国で新型コロナウイルス感染症(COVID−19)に罹患した肺がん患者400例超の患者背景や予後などを検討したTERAVOLT registryの結果を発表しました。対象は2020年2月8日から2020年5月8日までの肺がん患者です。回復群が169例、死亡群が141例、治療中が118例です。既往症で頻度が高かったのが、高血圧、腎不全、血管障害、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで、いずれも死亡群で高頻度でした。特に高血圧は、死亡群の53.2%に合併していました。3か月の間におこなわれたがん治療の内容は、3群とも多い順に化学療法、免疫療法、分子標的療法、放射線治療でした。死亡群では化学療法の割合が46.8%でもっとも高かったということです。COVID−19の症状は、頻度の高かったものとして発熱、咳、呼吸困難が挙げられ、死亡群では咳の頻度が最も低く、呼吸困難の頻度が最も高く78.0%でした。COVID−19に付随して認められた合併症は、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、多臓器不全などで、いずれも死亡群で頻度が高く、肺炎が71.0%、ARDSが49.6%でした。追跡期間中に死亡した141例のうち、79.4%がCOVID−19による死亡で、がんによる死亡は10.6%、がんとCOVID−19の両方を原因とする割合は8.5%でした。なお、入院した患者は全体の78.3%で、集中治療室(ICU)への入院は8.3%、機械的人工換気を受けたのは5.0%でした。死亡と関連する危険因子を検討したところ、年齢65歳以上、合併症の存在、ECOG PS(Performance Status=患者の全身状態)1以上、10mg/日以上のステロイド使用、抗凝固療法と化学療法による治療が特定されました。肺がん患者の死因の9割がCOVID−19だったというのは驚きでした。


2020.6.24. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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