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新型コロナウイルス その23 子供


 パリ北東部にあるクレピアンバロワで、今年2〜3月に新型コロナウイルス感染が拡大しました。パスツール研究所は小学校6校に通う510人を含む住民1340人を対象に調査しました。調査の結果、子供は大人と比べて新型コロナウイルスの特徴的な症状が少なく、感染力も低いことがわかりました。ウイルスに感染した子供の親で、その61%が陽性だった一方、感染していない子供の親で陽性だったのは7%でした。このことから、先に感染した親から子供に伝染した可能性が高く、その逆は少ないことが示唆されました。1月下旬フランスのスキーリゾートで起きた集団感染に9歳の男の子が含まれていました。すぐに、濃厚接触者の生徒や教師など170人以上が確認され、73人が検査を受けましたが、一人も感染者が認められませんでした。2人の兄弟にもうつりませんでした。スイスのジュネーブ大学病院の研究グループは、3〜4月にかけて同病院で感染を確認した16歳未満の子供40例を対象に家庭の感染状況を調査しました。40例のうち、78%(31例)は子供の発症前に同居している成人の家族が先に発症していました。一方、同居する家族より先に発症した子供は3例だけでした。子供の感染者数が少ない傾向は大半の国で見られ、7月1日時点で、スイス3.0%、アメリカ2.0%、中国2.2%、イタリア1.2%、スペイン0.8%、日本1.6%となっています。日本小児科学会でも、1.家庭内感染が大半をしめる 2.学校でのクラスターがない 3.成人とくらべて死亡例がほとんどない 4.ほとんどすべての症例で経過観察や対症療法で経過が良好 5.学校の閉鎖は流行阻止効果に乏しい、逆に医療従事者が仕事を休む必要があり死亡率を高める可能性がある、などと提言しています。今のところはっきりした要因はわかっていません。考えられる仮説がいくつかありますので紹介します。1.新型コロナウイルスの細胞への侵入経路の最初のきっかけは、ウイルスの膜表面上にあるスパイク蛋白質です。これが、咽頭や気道粘膜のACE2受容体にくっつくことで感染が成立します。子供はもともとこの受容体が未発達で感染しにくいことが考えられます。2.コロナウイルスには7種類のウイルスがあり、そのうち4種類が通常の風邪ウイルスです。新型コロナウイルス・SARS-CoV-2は蛋白質の遺伝子の8割がこれらのウイルスと同じです。これを交叉反応性と言いますが、この交叉反応性が感染を未然に防いでいる可能性があります。つまり、似たような病原性の弱いコロナウイルスに常にさらされており、免疫系がこの腫のウイルスに適応していると考えられます。3.子供は免疫系統がまだ未発達で、全身の血管や臓器に障害を与える「サイトカインストーム」を起こしにくいことが考えられます。インフルエンザなど子供の間で感染力が強いウイルスについては、感染拡大を遅らせるために休校などは有効と考えられますが、こと新型コロナウイルスに関してはそれが当てはまりません。休校自体が感染拡大防止にそれほど有効性がないことがわかってきました。しかし、重症例もあり、治療の決め手がありませんので、今後の推移を見守るしかありません。


2020.7.10. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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