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新型コロナウイルス その24 健診


 健診には文科省が担当する学校健診、厚労省が担当する事業主健診、妊産婦・乳幼児健診、特定健診、がん検診などがあります。健診を行う団体には、人間ドック学会、日本医師会、日本病院協会、日本総合検診医学会などがあります。全国に1200を超える保険組合がそれぞれの団体に委託して行う仕組みになっています。今年初めから新型コロナウイルス感染症が流行し、感染が不安で健診を控える人が増えてきました。日本医師会でも、4月22日に3密を避けるため、できるだけ防止策をして行うよう、できなければ延期するよう提言を出しました。私が所属する人間ドック学会が全国の特定健診やがん検診をおこなう施設に、5月末アンケート調査を実施しました。緊急事態宣言が出ていた期間、今までがん検診などをおこなってきた全国389施設の8割超、特定警戒都道府県にかぎると9割が中止していたことがわかりました。練馬区医師会でも各種健診を再開したのは7月に入ってからです。COVID-19は、8割の人が軽症か無症状で経過しますが、37.5℃以上の熱が数日続けば、ほとんどの人が肺炎を起こしています。この時点で胸部X線撮影を行いますが、初期の段階で所見のない人がいます。これは、COVD-19の特徴で、ウイルスが肺の間質に浸潤するからで、胸部CT検査をしなければわかりません。症状があまりないにも関わらずCT検査で浸潤影がみつかる人が多数報告されています。当院で3月から4月上旬にかけて、まだPCR検査が十分機能していなかったころ、心配で胸部CT検査を受けた人がいます。本当に肺炎だった人もいますが、全員が経過観察でよくなりました。ただ、肺炎でなかった人の中に数人、肺癌がみつかりました。不幸中の幸いで、全員が早期がんで、手術で助かりました。もしも、その時胸部CT検査をおこなっていなかったら、肺癌は見落とされていたことになります。「新型コロナウイルス その17 麻疹」にも書きましたが、予防接種も同じです。3月19日、厚労省は各自治体に新型コロナウイルス感染症対策のため、時間帯をかえる、場所を変える、などの対策を立てるよう指示を出しました。しかし、現実はほとんどの予防接種が3か月以上ストップしています。小児科外来の患者の半分が受診控えしている最中でもあり、予防接種どころではありません。イギリスでは、7月13日現在、新型コロナウイルス感染者数が290,133人、死亡者44,830人となっていますが、国民の通常の健診、がん検診、予防接種だけは、このコロナ禍の中、滞りなくおこなわれています。これは政府が主導しているもので、任意ではなく、国民の義務です。COVID-19で亡くなる人より、がん、心疾患、脳血管疾患、市中肺炎で亡くなる人の方がはるかに多いわけで、イギリスの政策は参考になります。予防接種では特に1歳未満の子供を持つ親御さんは、防げる病気にかからないようにする義務があります。幸い乳幼児のクラスターは報告されていません。2019年、日本でがんに罹患した人は1,017,200人、死亡した人は380,300人、心疾患に罹患した人は1,732,000人、死亡した人は204,837人、脳血管疾患に罹患した人は1,115,000人、死亡した人は62、122人です。この3〜4カ月の新型コロナウイルスによる健診の未受診が、今後これらの疾病の増加をまねくことは明らかです。人類にとって、新型コロナウイルスは100年に1度の未知との遭遇で、不安は尽きませんが、幸いクラスターがどこで発生するか、どんな人が重症化するか、いろんなことが見えてきました。医学の進歩も100年前の「スペインかぜ」の時とは違います。一度きりの人生を、平常心を保って行動することが大切です。


2020.7.14. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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