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新型コロナウイルス その26 ゼロリスク


 私は田舎の家の洗濯たらいで生まれました。生まれたのが12月8日の朝で母はとても寒かったと思います。同じ日、母の友人が勤務先の病院で赤ちゃんを産みました。しかし、赤ちゃんを産んだと同時に亡くなってしまいました。母はそれを聞いてショックでお乳が出なくなりました。家の裏にヤギを飼っている人がいました。私はヤギの乳で育ちました。3歳の冬、一時私が行方不明になりました。近所中で捜索しましたが、なかなか見つかりませんでした。田舎の家は掘り炬燵です。中で練炭を燃やします。その中で遊んでいる間に一酸化炭素中毒になっていました。私は救急車で病院に運ばれ一命をとりとめました。4歳の時には腸重積症にかかり、初めて手術台に乗りました。その時の麻酔の匂いを今でも覚えています。大学1年生の時に車の免許を取りました。父のお譲りの車をもらい、夏休みに実家から大学に戻る途中、高速道路で雨の中スリップし、中央分離帯に激突しました。フロントガラス越しに、身を投げ出すように道路に放り出されました。目の前をトラックが通り過ぎていきました。その後のことは覚えていません。気が付いたら、病院のベッドの上でした。大学病院時代は、ほとんど徹夜で仕事をしていました。12月31日の夜、亡くなった患者さんの解剖が終わり、翌朝4時ごろ、車で帰る途中つい居眠りしてしまいました。民家の駐車場の壁に激突し、車は大破し炎上しました。かろうじて車からはい出ましたが、その後のことは覚えていません。勤務先の救命救急センターに運ばれ、ほぼ1週間呼吸器につながれていました。まだ、バブルの余韻の残るころでした。休日自転車で魚釣りにでかける最中に、後ろから知らない人に呼び止められました。私に銃口を向けています。「お前、殺してやる」といって騒いでいます。私はなにがなんだかわからず、茫然としていましたが、後ろから来た兄貴分らしい者が、「おいおい、そいつじゃない。」と言って止めました。その後も数え上げたらきりがないほどの危機に遭遇してきました。今の私があるのはただ偶然に幸運がかさなった結果です。世界中で新型コロナウイルスに対して徹底した対策がとられていますが、この世の中からウイルスが消えてしまうことはありません。ドイツでは新型コロナウイルスのために5万人のがんの手術が先送りになりました。日本で、新型コロナウイルスが原因で亡くなる人は最近ゼロか一桁台ですが、肺炎や肺気腫、喘息などの呼吸器疾患で亡くなる人は日々700人を超えます。政府も専門家会議も新型コロナウイルスをゼロにするためにPCR検査を行い、追跡調査をしています。私は最近、このやりすぎた方法に違和感を覚えます。人は「ゼロリスク」で生きてはいけません。東日本大震災時に起こった原発事故よりも、避難先で亡くなった人の方がはるかに多い。2001年3月11日のアメリカの同時多発テロ後に、飛行機に乗る人が減り、交通事故が多発しました。2019年度の自殺者は2万人、その中に10代の659人の自殺者が含まれています。今後、新型コロナウイルスの影響で自殺者は1.5倍に膨らむと予想されています。国際航空運送協会(IATA)は5月5日、飛行機でのクラスターはないと発表しました。今年1月〜3月、加盟する主要18か国に聞き取り調査をしました。飛行機搭乗後に新型コロナウイルスの感染が確認された1100人を追跡調査し、同じ便に搭乗していた10万人以上の乗客の中に、二次感染者が一人もいなかったと報告しています。飛行機の機内空調が関係しているのではないかと推測されています。ウイルスの性質もわかってきました。対策の方法も一律ではなく個別にする必要があります。日々、メディアで全感染者数を報告し、不安を煽る必要はありません。


2020.7.17. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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