「トランプホテル」

　家族５人でハワイに行ったときには、私たちはたいていワイキキビーチから少し離れた安いコンドミニアムに泊まる。６年ほど前であろうか、隣に周辺のホテルとは明らかに雰囲気の違う豪華なホテルが建っていた。これがトランプホテルかと今回のアメリカの大統領選挙で初めて知った。イギリスがＥＵを離脱した時も驚いたが、まさかクリントン氏が敗北するとは思いもしなかった。アメリカがリードしたＴＰＰも風前の灯火である。現代は科学も経済も文化もそれぞれの国の特徴を尊重しながら複雑な工程を経て人や物の行き来がある。自国の国だけを発展させることは、もはやできようはずがない。このポピュリズムの大合唱はまるで先の大戦前夜の勢いを彷彿とさせる。メディアもジャーナリストも仕事が増えて楽しいかもしれないが、はっきりと駄目なものは駄目と言ってもらいたい。トランプ氏が本当に厳しい状態におかれた労働者のことを考えているとはとても思えない。社会的にすべてを手に入れた者が最後にほしいものが名誉であろう。大統領にただなりたかっただけに違いない。アメリカ国民はトランプ氏の口上にまんまとだまされた。文明は後戻りできないと吉本隆明は言っている。困窮した労働者を救うために２００年前のゴールドラッシュを演出するのは無理な話である。地球は崩壊する。しかし逆に言うと、こうやれば大統領にもなれるということである。これから起こる恐ろしいことは抜きにして。

２０１６.１１．２３.　練馬区　櫻田　二友
東京保険医新聞　２０１７年１月　新年特集号から