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脱炭素狂騒曲 その9 原発処理水


 8月24日に処理水が海に放出されることになりました。濃度を薄めて排水しても、放射能の総量は変わりません。中国が「核汚染水」と言って反対するのもわかります。処理水が1000基を超えるタンクに収められていましたが、98%を超えてしまい、行き所がなくなってしまいました。ALPS(多核腫除去設備)を使って、国は(勝手に決めた)基準値の2千分の1にあたる「検出限界値」を下回っているため、問題はないとしています。だだ、ALPSは62種類の放射性物質を取り除くことができますが、トリチウムは除去できません。濃度を1リットル当たり1500ベクレル以下にするために100倍以上の海水で希釈して放出するから問題はない、と訳の分からない説明をしています。放射性物質に半減期(壊変=初めの原子核の数が半分になるまでの時間)がありますが、ヨウ素131が8日、セシウム134が2年、セシウム137が30年、ストロンチウム90が29年、カリウム40が13億年、ウラン238が45億年、トリチウム232に至っては141億年です。壊変速度はだんだん遅くなっていきますから、環境から消えるにはその数倍の年月がかかります。海水で100倍に薄めても環境に対する影響は変わりません。そもそもなぜ原子力発電を始めたのか。これは人の知識欲です。哲学者・吉本隆明は原子力推進派として表舞台から消えましたが、別に推進していたわけではありません。人類は知識を得れば使いたくなる、文明は後戻りできないと言っていただけです。ウラン235やプルトニウム239などの核分裂性物質が中性子を吸収することによって発生する核分裂反応は、新たに中性子を放出します。これら中性子は平均2MeVのエネルギーを持っていますが、媒質中にまだ核分裂物質が存在していれば、この過程が繰り返され、核分裂連鎖反応を起こします。この核分裂連鎖反応をきわめて短時間のうちに行わせ膨大なエネルギーを瞬時に放出させるものが原子爆弾で、核分裂連鎖反応を制御した形で発生させることで、核分裂のエネルギーを安全に取り出すための装置を原子炉といいます。世界で初めて人工的に原子炉が臨界に達する(核分裂をおこす)ことに成功したのは、1942年、米国シカゴ大学です。1951年には、世界初の原子力エネルギーを使った発電が米国で行われました。1953年の国連総会で、アイゼンハワー大統領が「Atoms for Peace」の講演を行いました。その後、世界的に原子力の平和利用への注目が集まり、1957年には軍事利用への転用を防止するための国際機関としてIAEA(国際原子力機関)が設立されました。現在、世界に原子炉は、2021年時点で436基あり、発電所は91基です。最大が東京電力柏崎刈羽原発で821.2万kWです。これまで原発事故は、1979年3月28日、アメリカ、ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所、1986年4月26日、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所、2011年3月11日、東日本大震災に伴って起こった福島第一原子力発所があります。飛行機でいうと、91回飛んで3回落ちたという計算になります。これでは飛行機には乗れません。これらの事故を受けて、スウェーデン、イタリア、ベルギー、スイスなどの国が次々と脱原発に動き始めました。ドイツは今年4月に完全停止し、全電力に占める再生可能エネルギーを52%にまで上げました。しかし半分がロシアの天然ガスでしたので、ウクライナ紛争は寝耳に水の出来事で、今後どうなるか分かりません。原発の発電費用は化石資源と変わりません。しかし、脱炭素の視点からは、建設、事故処理、廃炉費用などを考えると、化石資源の何倍ものCO2を排出しています。原発はいまだ未完成品で、使えません。

 


2023.9.6. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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