脱炭素狂騒曲 その11 カーボンプライシング
経済産業省・資源エネルギー庁のホームページによると、「カーボンプライシング」とは、企業などの排出するCO2(カーボン、炭素)に価格を付け、それによって排出者の行動を変化させるために導入する政策と書かれています。具体的な例として「炭素税」や「排出量取引」などがありますが、国や企業、地域によって、さまざまな取り組みが考えられています。EUでは、2005年から世界で初めて「排出量取引制度(EU−ETS)」を開始。その取引量は、EU域内のCO2排出量の4割強をカバーしています。世界で最もCO2排出量の多い中国でも、2021年から電力事業者を対象に行っていて、年間排出量の約4割をカバーしています。2025年までに石油化学や鉄鋼、製紙などに対象領域を広げていく予定です。日本では2023年2月に「GX(グリーントランスフォーメーション)実現にむけた基本方針」が閣議決定されました。これは何のために行うか、国連は持続可能な開発目標(SDGs)に「貧困の撲滅」(ゴール1)、「気候変動対策」(ゴール13)を掲げています。全くばかげた目標ですが、これについて京都大学(大気・熱環境工学)、立命館大学、国立環境研究所のチームが、7月7日、「Sustainabillity Science」に研究発表しました。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」がめざす、世界の気温上昇を産業革命から2度以内に抑える目標(2度目標)を実現するため、世界に炭素税をかけた場合と、何の対策もしなかった場合とで、国際貧困ラインである1日あたり1.9ドル以下で暮らす世界の貧困人口の推移を試算しています。その結果、何もしなかった場合は、2015年に7億3600万人だった貧困者数は、経済発展に伴い所得が増えることで、2030年には3億5500万人に、2050年には9千万人まで減っていく。全体に占める貧困者の割合(貧困率)でみると、15年に11%だったのが、30年には4.3%となり、50年には1%を切る。だが、2度目標のシナリオでは、何もしなかった場合より、30年には6500万人、50年には1800万人、貧困者数が多くなると試算した。さらに、国際社会で格上げされた1.5度目標のシナリオでは、何もしなかった場合より、30年には1億3000万人増、50年には3700万人増となる。増加人数が2度目標から倍増すると出た。2度目標でも1.5度目標でも、現状(15年)より貧困者数が減っているが、削減対策をしないよりは30年時点でも、50年時点でも2〜4割増やす計算になる。とりわけアジア・アフリカ・中東で影響が大きかった。研究チームは、削減対策は炭素税などのカーボンプライシングに依存しすぎず、社会全体でエネルギー需要を抑制したり、貧困層に炭素税を免除したり、税収を再分配したりするほか、貧しい途上国の排出削減を減免することも選択肢ではないかと提案しています。論文は国連のSDGs;「貧困の撲滅」(ゴール1)とは程遠い結果となっています。気候変動とCO2は全く無関係であると、氷河コアが示しています。そもそもCO2を削減しても、現在の地球は地質学的に氷河時代における温暖化モードである「間氷期」に分類されます。2050年にCO2をゼロにしたら、地球は凍ってしまいます。しかし、心配はいりません。カーボンプライシングをするためには現在の数倍もの化石資源が必要になってくるからです。したがって、幸いなことにゼロにはならないのです。途上国の貧困をなくすために、電気・ガス・道路などのインフラ設備、食料、衣料、クスリ、ワクチン、医療設備等の提供が行なわれていますが、本当に必要なのは水と炭素(天然資源)です。これを、一部の利権団体がにぎっているのが問題です。この研究もその一つです。
2023.9.12. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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