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脱炭素狂騒曲 その14 ハワイの山火事


 大気中には、地表面から飛んだ土壌粒子、火山活動により放出される火山灰、海上の飛沫(海塩粒子)、陸上や海洋の植物からの様々な有機物質などから、自然環境の中で形成された半径10μm以下の大気粒子が存在し、これを「エアロゾル」といいます。世界的に進行する大気汚染によって、エアロゾルは年々増加し地球気候の形成に深く関わっています。化石燃料の燃焼や、森林面積を大きく変えるような人間活動は、より多くのエアロゾル粒子を生成します。地球全体で平均すると、大気中に存在するエアロゾル粒子の約10%が、人間活動によって生成されたものです。まず、エアロゾルの存在がなければ、雲は形成されません。通常の大気中は、エアロゾル粒子が水と結晶化する際の核となって、雲粒が形成されるからです。これをエアロゾルの「雲核効果」といいます。エアロゾルがない場合には、非常に高圧の水蒸気量が存在しない限り、雲は形成されません。雲核形成に関与するエアロゾルが多くなると、個々の雲粒径は小さくなって、太陽光を透過させにくくなり、雲の寿命は長くなります。また、雲は太陽光線を散乱するため、地球が吸収する太陽放射を減少させる「日傘効果」も引き起こします。日傘効果は、地球表面の平均気温を下げる効果があります。火山活動も、大気のエアロゾルを増加させる要因の1つです。火山噴火が起こると、水蒸気H2O、二酸化炭素CO2、二酸化硫黄SO2、硫化水素H2Sなどのガスと、それから生成されるエアロゾル、火山灰や塵などの固形のエアロゾルが放出されます。比較的大きな固形のエアロゾルは、ほぼ数週間で地表に落ちてきます。しかし、ガスから生成される小さなエアロゾルは、落下速度が遅く、1年以上も成層圏に留まったままです。このような成層圏エアロゾルによって、太陽放射は散乱され、その一部は宇宙空間に反射されます。そのため、このような成層圏エアロゾルの日傘効果は、地球の低温化を引き起こすのです。1991年にフィリピンのルソン島西側にあるピナトゥボ火山が、9時間にわたる大噴火を起こした時には、地球規模で地表温度が下がり、1993年になってようやく回復したことが観測されています。ピナトゥボ火山の噴火は非常に大きく、ここ100年ほどの間に起きた最も強力な火山の噴火でした。噴火が終わるまでに、約2,000万トンの二酸化硫黄SO2が放出され、二酸化硫黄SO2は対流圏をつきぬけて、成層圏にまで達しました。二酸化硫黄SO2から生成した二次エアロゾルが、2年に渡って日光を遮り、地球の平均気温を0.5℃も下げたのです。たった1度の噴火で、100年かけて積み上がった地球の温暖化が、一時的にではあるにしろ押し戻されてしまったのです。こうしたピナトゥボ級の大噴火が、数年に1度のペースで発生すれば、21世紀の間に起きると予想されている人為的な地球温暖化の大部分が相殺されてしまいます。過去の地球面気温の時系列における1940〜80年の間の低温化傾向は、このような火山起源のエアロゾルの効果であることが、最近の研究で裏付けられています。2022年1月15日に南太平洋のトンガで海底火山が大噴火(NASAの推定で威力は広島原爆の数百倍) しました。大量の火山灰を放出したので、これからの地球の気温を下げるかもしれません。8月8日のハワイの山火事も同じです。この20年で世界の山火事が倍増し、800万へクール(東京都の約40倍)が消失、これは地球温暖化の影響であると、毎日のように報道されています。しかし、火事によって放出されるエアロゾルの日傘効果については全く報道されていません。21世紀に、もう一度ピナトゥボ級の大噴火が起これば「パリ協定」は無効です。

 


2023.9.18. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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