脱炭素狂騒曲 その15 さざ波
50年ほど前から「南極や北極の氷が融けて、海水面が上昇する」と、よく言われてきました。「地球温暖化によって極域の氷が融けると、世界中の海水面が数m上昇し、それにより、バングラデッシュやモルディブなど、数十か国の国土の大半が水没する。アル・ゴアの「不都合な真実」では、「旧約聖書の「ヨハネの黙示録の世界」、「ノアの箱舟」を例に出して、フロリダ州の半分が水没する、世紀末がやってくる、と予想しました。2010年、日本でも、丸の内、皇居など海抜1mの地域は完全に水没すると言われてきました。私は学生時代からヨットに乗っていますが、海水面が上昇している感じはありません。もともと、潮の干満は月に2回あり、満月の大潮では、干満差は2mにもなります。中学の理科で習う「アルキメデスの原理」を復習します。「流体(液体や気体)中の物体は、その物体が押しのけている流体の質量が及ぼす重力とおなじ大きさで上向きの浮力を受ける」。コップの中に氷の塊を入れ、水を足していっぱいにします。その後、氷が融けた時にどうなるか観察します。水面の高さは変わらず、あふれ出ることはありません。よく北極の氷河が崩れ落ちる映像がテレビで放映されますが、北極の氷が全部とけても、海水面は変わりません。それでは南極の氷はどうでしょうか。南極の氷は地面の上にあるので、南極の氷が融けると海水面は上昇します。南極の氷床は平均で2000mほどの厚みがあるので、これがすべて融けると、海水面は75m上昇します。しかし、心配いりません。南極大陸の気温はどんどん低下しており、1950年頃はー49℃でしたが、最近ではー50℃に近づきつつあります。この気温では、氷が融けることはありません。南極大陸はアメリカとメキシコを合わせたほどの面積で、米航空宇宙局(NASA)のチームは2015年11月に1992年〜2001年の間に年間1120億トンの氷が加わった、と報告しました。南極付近の気温が高くなると、海水面での蒸発が増え、それが雪となって南極に降り積もるからです。ただし、海水面は間違いなく上昇していて、だいたい過去1万年にわたって、最後の氷期以降ずっと海水面は上がり続けています。海水面は、当時から約130mも高くなっていますが、その大部分は最初の1,000年の間に起きています。20世紀中では、海水面は20cmも上昇していません。20世紀中の海水面の上昇の主な原因は、海水が温まって熱膨張しているからです。イギリス国立海洋学センターNOCの研究者が、1277か所の観測点を選び、測定値の平均を取りました。1858〜2009年の152年間の潮位変化を測定しています。それによると、152年間に世界の海水面は、年におよそ2mmずつ上昇しています。しかし、1950年前後で、上昇ペースは変わっていません。つまり、人間のCO2排出がわずかだった1958〜1950年(93年間)も、CO2大量排出期の1950〜2009年(60年間)も、海面上昇のスピードは、ほとんど同じでした。年間2mm海面上昇が続くとしても、50年後にせいぜい10cmですから、通常の月の干満差にしたら、「さざ波」程度です。アル・ゴアの「フロリダ州の半分が水没」もハンセンの叫んだ6m上昇(3000年分)も絶対にありえません。世界の総資産の半分を約1%の人が握っています。まだまだ資産を増やそうとしています。欲も大概にしておかないと、本当に地球は滅亡してしましいます。地球は宇宙の天体のダイナミックな動き、「ミランコビッチ・サイクル」の中にあり、とても人の手が届くところにはありません。地球温暖化の話も脱炭素政策も資産を増やすための謀略です。
2023.9.20. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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