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脱炭素狂騒曲 その17 欧州の病人


 ドイツのシュルツ政権は8月30日、環境投資を進める中小企業などへの計320憶ユーロ(約5兆円)規模の減税を柱とする経済対策を決めました。減税は、企業が気候変動対策や研究開発に投資をする際などに税制優遇するもので、政府は年間70憶ユーロ(約1.1兆円)、2028年までで計320ユーロ規模の効果があるとしており、民間投資を促す狙いです。国際通貨基金(IMF)の最新の予想によると、2023年のドイツの成長率はマイナス0.6%と、主要7か国(G7)で唯一マイナス成長になる見通しです。経済低迷の一因は、ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の高騰です。電気料金は日本の約4倍で、ドイツ商工会議が8月29日に発表した調査では、ドイツ企業の52%が事業にマイナスとの見方を示し、3/4が投資活動を縮小しています。政府の規制も混乱に拍車をかけています。来年1月以降に新設する暖房システムに、ガスや灯油を使うことを原則禁止し、65%以上は再生可能エネルギーを使うことを義務付ける法案を閣議決定しました。2022年度の世界のGDPランキングは、アメリカが25兆3468億ドル、中国が19兆9115億ドル、日本が4兆9121億ドル、ドイツが4兆2565億ドルで、インド、イギリス、フランス、カナダ、イタリア、ブラジルと続いています。いまだドイツはフランスやカナダの1.5〜2倍のGDPを誇ります。1889年11月、ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一されました。その後、ドイツは10%を超える失業率や慢性的な赤字に見舞われ、長期の経済低迷が続き、「欧州の病人」と呼ばれていました。その後シュレーダー政権が2000年代前半に、失業手当を減らして就労を促す労働市場開拓や、緊縮財政に踏み切りました。本格的な成長軌道に乗り、欧州が債務危機に苦しんだ2010年代前半から、中国経済にも助けられ、「一人勝ち」と言われる状態にまでなりました。しかし、ドイツは再生可能エネルギーにシフトしており、今年4月、17基あった原発をすべて廃止しました。現在、風力が30.6%、太陽光が11.4%、バイオマスが9.7%などとなっており、30年には80%、35年には100%を目指しています。再生可能エネルギーを作るには大量の石油・石炭・天然ガスなどの化石資源が必要です。ドイツ自前の化石資源は30%足らずで、そのほとんどをロシアに依存していました。ロシアのウクライナ侵攻後、これができなくなり、エネルギー価格が高騰してしまい、経済がたちゆかなくなってしました。イギリス、フランス、オランダ、スペインなど、他のEU諸国は、アジア・アフリカ諸国に広大な植民地を所有していました。いまだに、そこからのあがりでしのぐことができますが、ドイツはそれもほとんどできません。高齢化も進み、緊縮財政による公共インフラの老朽化、新たな成長産業への投資不足、問題は山積しています。この状態で再生可能エネルギーに突き進んでいけば、今後数年にわたってマイナス成長が進み、再び「欧州の病人」と呼ばれる日がやってきます。他のEU諸国はなぜか、ドイツと違ってバランスよくエネルギー政策を行っています。9月20日、国連総会の「気候野心サミット」で、グテーレス事務総長は、岸田首相の演説を拒否しました。化石燃料への「むき出しの強欲」が原因で温暖化対策ができていない、と非難しています。非難されるべきは国連のほうで、自分たちの利権のために、気候変動・脱炭素の「ウソ」を作り出しただけです。「ああ、そうですか、ごめんなさい」と、知らん顔をしておけばいいのです。そうしなければ、「欧州の病人」になってしまいます。

 


2023.9.23. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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