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脱炭素狂騒曲 その20 知らぬが仏


 10月8日の日経新聞の社説に次のような記事が掲載されました。『今年4月、大阪・千里中央駅前のスーパーが、入居する商業施設の老朽化に伴い閉店した。1973年の第1次石油危機の際、トイレットペーパーの買い占め騒動はこのスーパーで始まった。千里丘陵は戦後の高度経済成長の下で、大阪のベッドタウンとして開発が進んだ。パニックがニュータウンで始まった意味は小さくない。石油危機は高度成長の転換点になったからだ。第4次中東戦争から10月6日で50年が経過した。戦争に合わせてアラブ産油国は石油戦略を発動し、消費国は供給途絶の恐怖に震え上がった。中東産の安い石油に依存してきた日本は構造転換を迫られた。石油の調達先を中東以外に広げる、脱中東、エネルギー利用を石油以外に広げる脱石油、徹底した省エネルギーに着手した。それから半世紀、ウクライナ侵攻と、加速する脱炭素の潮流が、世界に再びエネルギー転換を迫る。日米欧の陣営とロシア・中国の陣営の対立は、自由貿易を前提としてきた石油や天然ガスの流通を分断した。エネルギーの価格高騰と、なりふり構わぬ争奪戦は、グローバルサウスと呼ばれる振興・途上国と先進国の亀裂を広げた。頻発する異常気象を前に気候変動の加速は待ったなしだ。11月に開く第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)のスルタン・ジャベル議長は「エネルギー安保と脱炭素・経済成長を同時に実現しなければならない。」と指摘する。狭く、険しい道だ。日本も脱炭素と安定供給の両立は絶対条件だ。50年に温暖化ガス排出の実質ゼロを実現するためには、1次エネルギーの8割を超す化石燃料への依存を下げなければならない。まず、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入最大化だ。洋上風力発電や、住宅や建物の屋根に置く太陽光発電など、あらゆる敵地を掘り起こす必要がある。脱炭素電源である原子力発電も安全を前提に活用すべきだ。岸田政権は原発の建て替えなど原発政策の転換に踏み出した。ただし、国民の理解を得て原発を使うためには、使用済み核燃料の最終処分のような積み残しの課題に道筋をつけることが条件だ。再生可能エネルギーや原発を最大限導入しても、エネルギー供給を賄えない場合、燃焼させても二酸化炭素CO2を出さない水素やアンモニアを燃料に使う火力発電や、排出したCO2を回収して地中に貯留するCCS技術も必要になる。50年前の経験を今こそ生かすべきだ。石油危機の構造転換は省エネや原発、天然ガスの導入等に成果を上げたが、時間とともに危機感を忘れてはいまいか。特定のエネルギーに依存せず、自給率を高める。調達先を分散し、供給国との関係を非常時に備え備蓄やリサイクルに取り組む。50年前に突きつけられた原則に立ち返り、エネルギー戦略を最構築する時だ。再生エネや原発、脱炭素火力のどれかではない。あらゆる手段を動員し、コストを最小化する。脱炭素時代のエネルギーミックスを見つけなければならない。米政府は脱炭素技術の導入や開発支援に3690億ドル(55兆円)を投じる。欧州連合(EU)は環境対策が十分でない国からの輸入に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM)を導入する。保護主義的な様相を強める国家のぶつかり合いを、日本は座視するわけにはいかない。民主主義と自由貿易の価値観を共有する国々と連携し、供給網の確保に万全を期する必要がある。脱炭素時代が到来してもエネルギー安保の重みは変わらないことを肝に命じることが大切だ。』石油危機はオイルメジャーが、石油価格を釣り上げるために起こしたものでした。「脱炭素」も「省エネ」もかえってCO2を増やします。経済成長とは全く相容れない政策です。一番の問題は、この記事を書いた記者が、この事を十分わかって書いていることです。「知らぬが仏」です。

 


2023.10.8. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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