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脱炭素狂騒曲 その28 絵に描いた餅


 日本国憲法の改正には、国会で衆参両議員の3分の2以上の賛成票と、国民投票で過半数の賛成を必要とすると、日本国憲法第96条に書いてあります。民主主義では、多数決がとても大切で、いくら投票率が低くても、選挙では得票数が多いほうが当選ということになっています。米連邦最高裁判所が判決を下す時、英議会が法律を制定する時、地方議会が予算を承認する時、いずれも多数決で行われます。11月30日〜12月12日、第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議が、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されます。この会議の一番の問題は多数決ではなくて全会一致方式です。これは1995年の初回の会議以来変わっていません。200か国以上が参加し、圧倒的に途上国が多いため、多数決では先進国、産油国が負けてしまうからです。18年のCOP24では、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「特別報告書」で示した1.5℃という気温上昇の抑制幅を最終文書に明記することに少数の国が反対しました。新聞やテレビはこのことに全く触れず、1.5℃という言葉が独り歩きしました。ところで、環境規制で世界をリードしてきた欧州で、規制を見直す動きが出てきました。日本の新聞・テレビでは欧州の車は全部電気自動車というイメージがありますが、これは意図的な報道で、事実は全く違います。欧州の自動車販売に占める電気自動車の割合は、欧州全体で21.0%、オランダ;35.0%、ドイツ;31.0%、イタリア;9.0%、英国;23.0%です。日本;3.0%、米国;7.7%、中国;29.0%で、新聞・テレビで報道するほど、電気自動車の普及は進んでいません。EUは昨年、一度ガソリン車の新車販売を35年に禁止すると決めました。しかし、その後ドイツやイタリア、中東欧の国々が国内の自動車産業を守ろうと、例外措置の導入などを求めていました。そうした中でEUは今年3月、合成燃料「e−fuel」を使うエンジン車は35年以降も新車販売を認めることで合意しました。e−fuelの原料は、再生可能エネルギー由来の電気で水を分解して作った水素と、二酸化炭素CO2で、走行時にCO2を出しますが、生産時に消費するCO2を差し引くと、環境負荷は小さいとされています。一方で、合成燃料の普及を目指す国際団体イーフュエル・アライアンスは「EVを動かす電気を作る時には化石燃料を使っており、環境対応をEVだけに頼るのは間違いだ」と主張しています。ややこしい話ですが、欧州各国でEV推進の見直しが進んでおり、一枚岩ではありません。もう一つは中国の台頭です。現在欧州で販売をのばしているEVはほとんどが中国製です。なにせ、EVの半分がバッテリーでそのリチウム生産量の世界の65%を握っているからです。自動車部品メーカーにも影響がおよびます。ガソリン車の部品が3万点に対し、EVは2万点です。自動車部品大手は従業員の削減を強いられています。もう一つ問題があります。イーフューエルの課題はその価格の高さです。再生可能エネルギーを作るのに大量の天然資源を消費します。できた再生可能エネルギー由来の電気で水を電気分解します。この時また、大量の天然資源を使います。したがって、「e−fuel」はガソリン車の3〜8倍の価格になります。これでは車に乗れません。欧州のEVへのシフトは終了です。COPは全く機能しておらず、「絵に描いた餅」です。

 


2023.11.5. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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