脱炭素狂騒曲 その31 恥の上塗り
今年10月24日、米国の研究者らがまとめた2023年の気候変動報告書が発表されました。初版は2019年で「気候緊急事態」として発行されました。温暖化を中心に地球環境が悪化の一途をたどっていると警鐘を鳴らしています。とりわけ日本の今夏の猛暑は「地球過去10万年で最も暑かった可能性がある」とし、今後さらに熱波や洪水などが増えると警告しています。1万5000人以上の研究者が署名し、「人類存亡の危機」があることを「科学者の道徳的責務」として社会に伝える義務があるとしています。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの消費量は21〜22年にかけて17%増加で堅調な伸びでした。しかし、世界の石炭消費量も史上最高に達し、化石燃料が支配的な状況は変わらず、化石燃料由来のエネルギー消費量は再エネの15倍でした。期待されていた、コロナ禍からの復興とともに気候変動対策も一緒に進む「グリーンリカバリー」は「ほとんど実現しなかった」と結論づけています。そして直面したのが23年夏の数々の異常事態です。世界保健機関(WHO)などが発表した6〜8月に世界の平均気温は観測史上最も高くなった。ピークとなった7月上旬の気温は過去10万年の地球で最も高い可能性があると指摘しています。産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える国際合意に対し、今年は9月12日までに、世界気温がこれを上回った日が38日もあったと報告しています。海水温も高く、南極の海水面積も記録的な小ささになっています。災害も相次ぎ、日本の面積の4割にあたる1660万ヘクタールを焼いたカナダの山火事では、同国の温室効果ガス排出量を上回る規模の二酸化炭素CO2が大気中に出ました。九州などで死者がでた7月豪雨のほか、韓国やインド、リビアでも水害が相次ぎ、米国では猛暑で140人以上が亡くなりました。こうした事態について、地球の限界を超えた経済活動を追求し続けた結果、気候変動が「未知の領域に突入した」と報告しています。一方で、気候変動だけ手当をする対策を進めても、生物多様性などを代わりに犠牲にすることにつながるとして、公正で持続可能な世界経済への変革が必要だと訴えています。米オレゴン州立大学のウィリアム・リップル教授は「残念ながら今夏は、科学者が警告してきた事態が次々に現実になってしまった。洪水や山火事、熱波などがさらに劇的に増加する可能性がある」と指摘しています。国連の気候変動会議(COP)などを通じて「化石燃料由来の削減や、気候変動も脆弱な国、人々への支援、資金提供が進むことを期待している」とコメントしています。要約すると、1、「再エネ」はなんの意味もなかった、2、研究者がいくら緊急事態を宣言しても、「自然災害」は予知できない、3、「脱炭素」政策をすればするほど化石燃料の使用量が増え、二酸化炭素CO2排出量も増える、5、したがって持続可能な開発目標(SDGs)など存在しない、6、南極大陸の氷は融ければ融けるほど、水蒸気となって雲を形成して雪を降らせ、氷床はますます厚くなる。そもそも気候は変動して当たり前です。「人類存亡の危機」を煽っているのはWHOやその取り巻きの方です。何でもかんでも地球温暖化に結びつけて、「気候緊急事態」「未知の領域に入った」などと悦に入っていますが、ただただ新しい仕事が欲しいだけです。報告書はすぐにシュレッダーにかけ、「恥の上塗り」もここまでです。
2023.11.19. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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