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脱炭素狂騒曲 その32 マッチ売りの少女


 『それは、ひどく寒い大晦日の夜のことでした。あたりはもう真っ暗で、しんしんと雪が降っていました。みすぼらしい一人の少女が歩いていました。お母さんの木靴をはいていましたが、ぶかぶかで、馬車が横を通った時、転んでなくしてしまいました。小さな足に何もはかずにいると、寒さのために赤くはれて、青じんでいます。少女の古びたエプロンの中にはたくさんのマッチが入っています。一日中売り歩いても、買ってくれる人も、一枚の銅貨すらくれる人もいません。少女はおなかがすきました。どの家の窓も灯りが明々とついて、ガチョウの丸焼きの匂いがします。今日は大晦日なんだ、と少女は思いました。少女は一軒の家の陰で身をちぢめて丸くなりました。小さな足をぎゅっとひきよせましたが、寒さを防ぐことはできません。家に帰る勇気もありません。どうせお父さんに叱られるからです。小さな少女の手は今にも凍えそうでした。そうだ!マッチの火が役に立つかもしれない。少女はマッチを1本取り出して「シュツ!」とこするとマッチがメラメラと燃えだしました。まるでロウソクみたいにマッチが手のひらで燃えるのです。本当にふしぎな火で、まるで大きな鉄のだるまストーブの前にいるみたいでした。だるまストーブの前に足を延ばした瞬間、マッチの火は消え、ストーブもパッとなくなってしまいました。少女は別のマッチを壁でこすりました。火はいきおいよく燃え、とてもまぶしく、いつの間にか部屋にいました。テーブルの白いクロスの上には豪華な銀食器、ガチョウの丸焼きがのっていました。そのガチョウがお皿から飛び降りて、ゆかをヨチヨチ歩き少女の方に向かってきました。その時、またマッチの火が消えてしまいました。少女がもう一回マッチをすると、少女はとても大きなクリスマスツリーの下に座っていました。周りにあるたくさんのロウソクに手を伸ばそうとした瞬間、マッチの火はふっと消えてしまいました。たくさんあったロウソクは、ぐんぐん空に昇っていって、星になりました。少女は一筋の流れ星を見付けました。「誰か死ぬんだ…」と思いました。以前おばあさんに聞かされていたからです。そのおばあさんももういません。少女はもう一度マッチをすりました。前を見るとおばあさんが、光の中に立って、優しく笑っています。「おばあちゃん!」と、少女は声を上げました。「ねぇ、私をどこかに連れて行ってくれるの?マッチが燃えつきたら、おばあちゃんもどこかへ行っちゃうんでしょ…」少女はマッチの束を全部だして、残らず火をつけました。そうしないとおばあさんが消えてしまうからです。マッチの明かりは真昼の太陽よりも明るくなり、おばあさんは、少女を腕の中に抱きしめました。二人は空の向こうの、ずっと遠いところにある光の中に高く高くのぼっていきました。朝になると、みすぼらしい服を着た少女が壁によりかかって、うごかなくなっていました。頬は青ざめていましたが、口元は笑っていました。今日は一月一日、一年の一番初めの太陽が、寒さのため亡くなった少女のなきがらを照らしていました。少女は座ったまま、その手にはマッチの燃えかすの束が握りしめられていました。』「物事は放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、自発的に元に戻ることはない」という「エントロピー増大の法則」があります。熱いコーヒーをそのままテーブルに置いておくと冷めてしまい、もう一度熱くなることはありません。コーヒーを床にこぼすと、元のカップに戻すことができず、飲むこともできません。ではマッチ売りの少女はなぜ死んでしまったのか。「エントロピー増大の法則」では説明できません。10年近い論争の末、現在の物理学の結論は、少女の死は「低温」=「低エントロピー」の環境が原因ではなくて、体温の低下によりエントロピー廃棄の機能(炭水化物の酸化=二酸化炭素CO2増加)が正常に働かなくなって、エントロピー廃棄ができなくなり、生命活動が維持できなくなったためであるといわれています。「脱炭素」=「マッチ売りの少女」です。

 


2023.11.17. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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