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脱炭素狂騒曲 その33 レジ袋


 ノーベル賞は、ダイナマイトの発明者と知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に従って、1901年に始まりました。数あるノーベル賞の授賞者の中で最大の功績者は、それまでのニュートン力学を変えた、特殊相対性理論の発明者、アルベルト・アインシュタインで間違いないと思います。論文の発表は1905年ですが、ノーベル物理学賞を受賞したのは1921年です。受賞の知らせを受けたのは、アインシュタインが日本に渡航中の時でした。福岡空港のタラップに左手にバイオリンをかかえて降り立った写真が残っています。私の母校である福岡高校で記念講演も行いました。すべての研究者はノーベル賞をもらうために日々努力しています。その中には企業のなかで、一人でコツコツと数十年にわたって研究してきた人もいれば、大学の研究室で大掛かりな装置を使って研究したグループもあります。ノーベル平和賞は、最近もらってはいけない人がもらったりして、政治的な思惑がプンプンし、あまり価値がなくなってしまいました。ノーベル賞級の研究は研究者の数だけあるわけですが、ノーベル賞を抜きにして、アインシュタインの次に最大の発明を上げるとすれば、私は「レジ袋」だと思います。レジ袋は広島県大竹市の袋メーカー中川製袋化メーカーが1960年代に当時流行したストッキングの伝線防止のため。竹籠に代わる梨狩り用のポリ袋を開発したのがルーツです。1970年頃から、丈夫で水漏れに強いことを受け、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店で紙袋に代わり、ポリ袋やビニール袋が大量に使われ始めました。レジ袋の材質はポリオレフィンですが、これは石油精製の過程で自然に発生するもので、わざわざ作り出すものではありません。ペットボトルもペットボトルのフタも同じで、いわば石油の燃えカスで、原料はタダ同然です。これはノーベル賞級の発明といってもおかしくありません。捨てる時もゴミと一緒に捨てることができ、大変便利です。千葉県の房総半島沖500キロ地点の深海底に、大量のマイクロプラスチックがたまっていることが、海洋研究開発機構などの研究グループによる調査で明らかになりました。海外のこれまでの研究と比べても飛び抜けて多いといい、黒潮で運ばれてきた微粒子が集積しやすい仕組みがあるとみています。マイクロプラスチックは一般に5mm以下の微粒子のことをいいます。研究グループは2019年、有人潜水調査船「しんかい6500」や、より深くまで沈むことができる装置を使い、相模湾(深さ1000m前後)や、房総半島沖の海溝(9000m超)、さらに沖に広がる「深海平原」(6000m超)の計7地点で、海底の堆積物を採取しました。表層1cmの泥に含まれる微粒子を分析すると、特に深海平原で多く、乾燥させた堆積物1gあたり平均600個ほど、相模湾や海溝の10倍以上でした。これまで調べられた深海底で最も多かった地中海の地点を上回り、深海平原では地中海の260倍の所もありました。場所による材質や形の違いから、輸送経路も浮かび上がってきました。比較的細長いものが多く、東京湾や相模川のものとも似ています。陸地から海へと流れ出て相模湾に沈降、その後、地震による海底地すべりで巻き上げられ、相模トラフの深い地形を伝って運ばれたとみられています。一方、深海平原はポリエチレンとポリアミドがほとんどで、黒潮の海水中に見られるものに似ていました。付近は黒潮からの流れが渦を巻く場所にあたり、ポリ袋などのプラスチックごみも大量に見つかっています。黒潮に乗ってきた微粒子が、ここで沈んだとみられています。日本では、分別ごみはすべて一緒に焼却炉で燃やしているため、ここのプラゴミは日本のものではありません。政府御用達の研究ですが、研究そのものに意味がありません。石油の燃えカス(炭素;C)が元あったところに帰っただけで、いずれ分解されて、数千〜数万年後にまた化石資源になるだけです。

 


2023.11.22. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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