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脱炭素狂騒曲 その39 AI


 地球温暖化対策として、現在再生可能エネルギーを使用することが、世界中で叫ばれていますが、世界の一次エネルギー消費量がどうなっているか、皆さんご存じですか?2022年度、石油が36.7%、石炭が31.6%、天然ガスが23.5%、水力が6.7%、原子力が4.0%、再生可能エネルギーはわずか7.5%です。しかも、化石資源の消費量は再生可能エネルギーの伸びを年々上回っています。この理由は簡単で、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマスなど)を作れば作るほど、化石資源が必要になるからです。今年の春闘で新日鉄が、月額3万5千円のベースアップができたのは、再生可能エネルギーのおかげです。IEA(国際エネルギー機関)が2024年1月に発表した電力に関するレポートによると、世界の多くのデータセンターでは、生成AIなどの影響でさらに電力消費量が伸びています。2022年には消費電力量が約460TWh(テラワット時)だったのに対し、2026年には、その倍以上の1,000TWhに達する可能性があると指摘しています。オープンAIのChatGPTで回答するときの1回あたりの消費電力量は2.9Wh、一般的なGoogle検索の10倍に相当します。27年までに出荷される生成AI向けサーバーは85.4〜130TWhで、その消費電力量はオランダの年間消費量と同規模で、日本の原子力発電の2倍以上です。アメリカのスタンフォード大学が発表した研究によると、大規模言語モデル「BLOOM」が言語を学習する際に排出したCO2(二酸化炭素)の量は25tで、これは平均的なアメリカ人が1年間に排出するCO2量の1.4倍、ニューヨークからサンフランシスコまで飛行機で1往復する際の排出量の25倍に相当します。消費電力量は433MWhで、平均的なアメリカ人家庭の41年分の電力量に相当します。ただ、これはまだ少ない部類に入ります。ChatGPTを生み出したOpenAI社の言語モデル「GPT-3」が機械学習の際に排出したCO2は502t、消費電力量は1,287MWhで、BLOOMと比べると、けた違いに大きな数字です。この1,287MWhという電力量は、原子力発電1時間分の電力量(約1,000MWh)を上回っています。日本も例外ではなく、電力シンクタンクの電力中央研究所は、21年に9240億KWhだった日本の電力消費が50年に最大で37%増えると予想しています。増加額で最も大きな割合を占めるのが生成AIなどに使うデータセンターの電気です。電気代がより安い国にデータセンターを作ることも可能ですが、中東紛争、ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢の変化で使いづらくなっています。米マイクロソフトは日本でデータセンターを拡充するために2年間で29億ドル(約4400億円)を投じる方針です。ソフトバンクは北海道苫小牧市に、アジア・パシフィック・ランドは北九州市に建設を予定しています。NTTグループが開発した大規模言語モデル「tsunami」という生成AIでは、世界トップレベルの日本語処理性能を特徴とする一方、AIモデルの軽量化を進めており、ChatGPT(GPT‐3)と比較して、学習時のコストを最大で300分の1に抑えることができます。データセンターも消費電力を抑える取り組みが進んでいます。NTTコミュニケーションズの「Green Nexcenter」というデータセンターでは、生成AI向けに高発熱サーバーと、熱伝導率の高い液体によるサーバーの冷却装置を導入し、従来型と比べ、サーバー冷却のための消費電力を約30%削減できています。しかし、これらの削減に再生可能エネルギーを使っています。将来AIに人間の仕事を奪われるという指摘がありますが、このまま生成AIが増えると、本来人間が使うはずの電気をAIに奪われてしまいます。AIに再生可能エネルギーを使い、再生可能エネルギーに化石資源を使っています。まったくもって電気の無駄遣いです。「脱炭素」はなんの意味もありません。

 


2024.4.24. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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